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ナースcalling!
官能リレー小説 - ラブコメ

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ナースcalling! 4


 ヒロトのカルテを申し送りに書き記しながら、さも当然のような受け答えをするハルカ。
ヒロトが昨晩事故に遭い、翌朝の今し方病院で覚醒する間も、当直のハルカは働き詰めだった。
ハルカのそのタフな態度に、ベテランの先輩看護師も思わず舌を巻く。
世間で知られている以上に、看護師の仕事は過酷である。
24時間、病院内から患者が消える事はない。
24時間、看護師には仕事があるのだ。

「さてと、検温に採血、忙しい忙しい」

 申し送りを書き終えるや否や、ハルカは席を立ち、また別の患者のカルテを手に取る。
当然、患者はヒロトだけではない。
重軽入り混じった何百という患者が、治療の為に病院のベッドを埋めているのだ。
そんな過酷な現場に、ハルカはその身を投じている。
自ら好んだ職場でなければ、耐え得る事はないだろう。
苦しむ人々に献身する事が、今の彼女にとってのやり甲斐であり、苦しみを和らげ、解放する事がまた喜びだった。

「じゃあ検診いってきまーす」

 こうしてハルカは、疲労困憊の身体を再び奮い立たせ、患者の元へ向かう。
その横顔には、いつの間にか心地良い笑みが宿っていた。

 *

 心が洗われるような真っ白な天井。
しかしヒロトにはもう見慣れたもので、ただの壁の一部と化している。
退屈で退屈で仕方がないのだろうが、骨が変なくっつき方をされても困るのだろう。
つまらなそうに欠伸を繰り返してばかりだった。

「ヒマだ……」

 何度同じことを呟いているだろう。
現状を確認しても何ら変化がないと知りつつ、つい吐き出してしまうのは誰しも経験があるに違いない。
ヒロトにはただ、退屈な時間と無気力感だけを持て余していた。
退院したとしても、恐らく、先輩の後ろをついて回りテンプレートを聞かされる変化のない日々が待っている。
病院のベッドでただそこにある天井を眺めていても、職場に復帰して鉄骨を眺めていても、ヒロトにとっては同等な退屈でしかない。
無気力感を膨らませる一因であろう変化のない景色に、ドアから響くノックの音が頼りなくも色を添えた。

「……どーぞ」

「秋吉さーん。具合はどう?」

 病室内に入ってきた女は、アリバイを訊く刑事のように形式的な台詞を吐き出す。
しかし言葉の端々には、彼女独特の艶めかしい余韻が散りばめられていた。
名を作島ミチルという彼女は看護師ではなく、女医。
大人の女を思わせる落ち着いた雰囲気と、細長いレンズの縁に光る妖艶な気色には男心を弄ばれる。
白衣に包まれた成熟した体つきも、悪戯に加担し得る色気を漂わせていた。
ミチル自身にその自覚があるかは不明だが。

「べつに」

 溜め息に含ませて答えるヒロトには、ふてぶてしささえ感じられる。

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