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ナースcalling!
官能リレー小説 - ラブコメ

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ナースcalling! 3


 いつもはヘルメットを被るのが煩わしかったヒロトだが、その有用性を身を以て知る事になった。

「とりあえず、今は安静にしてて下さいね。さもないと、変な風にくっ付いちゃいますよ」

 看護師は、小さな子に接するような笑顔と態度で、ヒロトに注意を促す。
対人関係に億劫なヒロトも、その看護師に嫌味な印象を受ける事はなかった。

「ああ。分かったよ、看護婦さん」

 ヒロトの気のない返事にも、看護師は優しい笑顔を崩さない。

「良いですね。じゃあ、何かあったらそれを押して呼んで下さい」

 ヒロトは、ベッドの枕元にぶら下がるナースコールのボタンの説明を受ける。
半ば適当に聞き流すヒロトと、それでも真剣に行き届いた説明をする看護師。
2人の態度は、実に対照的だった。
説明を終え、看護師は病室を出ようとする。どうやら病室は個室のようである。
特に見送る事もなく、ヒロトは瞳を閉じる。

「では、お大事に……あ、そうそう。私は小野ハルカといいます。秋吉さんの担当です」

「あ、そう」

 ハルカの挨拶にも、ヒロトは素っ気ない態度で応じる。
そしてハルカは一礼し、病室を後にした。

 *

 吐き出しそうになった長い息をハルカは慌てて呑み込んだ。
そうすることによって抑え込まれた一息は、複雑な感情を纏めた溜め息ではなく、疲労感を窺わせる嘆息に近い。
だが、ハルカがそれを吐くまでに至らなかったのは、ハルカなりのやりがいを感じていたからだった。
看護師という職業はハルカが思っていたよりも多忙であると同時に、元気を取り戻していく患者の姿は、やはり想像以上の喜びをハルカに与える。
それを糧にすることで、ハルカは患者と真摯に向き合い、尽力する事が出来るのだ。
しかし、感情の全てが体力に変換されるわけではない。
先程の一息は、意識だけでは払拭しきれない疲労を蓄積した身体からの訴えなのだ。

「さ、仕事仕事っと」

 気を引き締め直すハルカ。
そうすることで、白衣の天使としての翼を再び広げることができる。
カルテを抱え直したハルカは、次の作業を行う為にナースステーションへと足を向けた。

「小野、戻りました」

 ハルカがナースステーションへ戻って来ると、そこには数人の看護師が机に向かい、各々の事務作業に励んでいた。

「おかえり。あ、昨晩運ばれてきた急患、どうだった?」

「秋吉さんですか? ええ、今目を覚まされましたよ」

 ハルカはカルテを机に置きながら、先輩看護師の問い掛けに答える。

「そっかぁ、とりあえず良かったわね。ハルカも当直で大変でしょ?」

「いえいえ、私より患者さんの方が大変ですから」

「うは。16時間勤務でよく言うわ」

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