ナースcalling! 13
ヒロトは、改めてハルカの顔を眺める事になった。
愛くるしい瞳、整ったパーツの配置。そのどれもが可憐な顔立ちを形成するのに一役買っている。
その黒水晶のような美しく潤んだハルカの瞳には、心奪われるようにそれを覗くヒロト自身の姿が映っていた。
「だ、大丈夫ですか? 秋吉さん」
「えっ? あ、ああ……」
ハルカの声で我に帰り、途端に気恥ずかしくなったヒロトは、急いでハルカの顔から視線を外した。
ハルカは未だ頬を染めながら、今一度ヒロトの身体を抱き起こす。
ようやくベッドに座る形になったヒロトは、小さいながらも深い溜め息をついた。
とりあえずの安心と言うよりも、それは、何かを抑えようとしているようにも見えた。
「秋吉さん。もう1人で車椅子に乗ろうとしちゃダメですよ?」
ハルカも溜め息をつきながら、ヒロトの隣に並ぶようにベッドに腰掛ける。
ヒロトはハルカに顔も向けられずに、俯き加減に頷く事しか出来なかった。
ようやく、ヒロトの胸中に申し訳ないという感情が浮かんだ。
身勝手で情けない自分の為にさえ、献身的に尽くすハルカに、心打たれるものがあったのか。
「悪かった。これからはそうするよ」
ヒロトはその感情を認め、ハルカに謝罪した。
ハルカは少々面食らったような表情を見せたが、すぐに笑顔を以て応えた。
「分かっていただけたら良いんですよ。早く治しましょうね?」
ハルカの呼び掛けに頷くヒロト。
珍しく素直な反応を見せるヒロトに対し、ハルカはまた意外そうな表情を見せた。
「何だよ?」
「あ、いや、何でもないです」
そんなハルカを、ヒロトは怪訝そうに見つめる。
ハルカは慌てた様子で手を振りながら、平静を装った。
「あっ、そうだ!」
ハルカは思い出したように手を叩きながら、ベッドから立ち上がる。
「秋吉さん、車椅子に乗りたかったんですよね?」
「あ? ま、まあ……」
たじろぐヒロトを尻目に、ハルカは嬉々として車椅子に手を掛ける。
「ちょっと病院内を回りましょうか? 気分転換になると思いますよ」
「あ、ああ……」
ハルカに微笑みを向けられ、断る事も出来ずにヒロトは頷くしかなかった。
今度は介助を受けて車椅子に乗せられたヒロトは、ハルカに車椅子を押されながら、病室を後にした。
*
車椅子の乗り心地……身体的は悪くなかったが。
子供の頃、キャスター付きの椅子に座り友達とふざけて押しあった。
どこかあの感覚に似ていた。
が、しかし……。
ロビーや中庭など人通りの多い場所にくると。
他人の視線が妙に気になり……自分がひとりでは歩く事も出来ないケガ人である事を改めて実感してしまう。
「ここのご飯はどうですか?」
そんな滅入り気味のヒロトにも……ハルカはニコニコと話しかけてくる。
うっとおしい……とは言えない。
何よりこうなったのは自分のせいだ。