無人島のビッチ達 27
しかし、そろそろ数週間が経つ。皆も魚と貝の生活に飽きてきてるだろう。
「……うー、お肉が恋しい」
実際、美咲はヤギと出会ってから時折口に漏らしていた。
美咲だけじゃない。皆動物性たんぱく質を欲してる頃だろう。無論俺もだ。
「そうだな。基地の改善と平行してやるか」
朝食を終えた俺は早速作業に取りかかった。実は動物がいるとわかった時から俺はあるものを作っていた。
それは竹で出来た弓矢だ。材料の竹は竹林から取ってきて弦は海岸にあった頑丈なロープ、矢は真っ直ぐな笹と拾った鳥の羽をトリミングした矢羽で何本か作ってある。
因みに矢筒は木の皮を折り曲げて作った。
試しに俺は数m先に立て掛けている木の板目掛けて矢を射る。
カツン!
「うーん、当たるには当たるが貫通力がいまいちか。先を釘にしてみるか」
「あら、随分熱心ね。」
と矢の改良をしていると香先生が話しかけてきた。
「えぇ、そろそろ動物性のたんぱく質が欲しいところだったので。狩れたら解体して焼き肉パーティーでもしましょうか」
「あら、恭也君はそんなこともできるの!?」
「はい。俺の爺さんがマタギ、つまり猟師でよく鹿や猪を狩猟しては目の前で解体してました」
「まぁ、凄いのね!」
「小さい頃は可哀想とか言ってましたが『生き物というものはな他の命を貰って生きておるんだ。豚や牛と同じ肉を得るには殺さなければならない。食物となった以上は食べてやるのが一番の供養じゃ』ってよく言われました」
「……とても素晴らしいお爺様なのね」
まぁその爺ちゃんも中学に入った時に病気で亡くなったけど……まさかあの時教わったスキルがここで役に立つなんてな。
ドス!
「よし、今度はバッチリだ!」
改良した矢はしっかりと木の板に突き刺さった。これなら急所に当たれば生き物を苦しませずに即死させることができるだろう。
だが弓矢だけでは獲物は捕まえられない。なので今度はトラップを仕掛けることにする。
「次はトラップを作るか。」
「なら先生も付いていくわ。人手は多い方がいいわよね?」
「わかりました。じゃあ一緒に行きましょう」
「ふふっ、よろしくお願いね。恭也先生」
俺は先生と一緒に森に入る。しばらく探索すると鹿のいた痕跡を見つけたのでこの辺りに罠を仕掛けよう。
「ちなみに恭也君、トラップってトラバサミみたいなものを使うの?」
「いえ、そういった近代的なものはないので原始的なスネアトラップにします」
スネアトラップとは木の枝のしなりを利用して輪っかで動物を捕らえる罠のことである。
材料も蔓とよくしなる木があればすぐにできる。
「よし、完成だ」
「まあ凄い!本当に器用ね!」
鹿が通るであろうルートにトラップを仕掛けた俺。その後も所々にトラップを設置していく。
「ふぅ……こんなもんだろ」
数時間後、最後のトラップを作り一息つく。途中先生の手伝いもあってかなりの数を仕掛けることができた。
後は引っ掛かるのを待つだけだ。
「それじゃ帰る………ん?」
元来た道を戻ろうとした時、微かに鳥の鳴き声がした。
「どうしたの?」
「先生静かに……右前方に獲物がいます」
俺は気付かれないようにゆっくりと忍び寄る。すると茂みの間から丸々とした七面鳥が現れたのだ。
「おぉ……なんてでかいんだ」
あれだけ大きな七面鳥なら皆のお腹を満たせるだろう。逃がすわけにはいかない。
距離はかなりあるがまぁ大丈夫だろう。俺は弓矢を構えるとゆっくりと引く。
「悪いな、俺達の晩飯になってくれ」
狙いを定めて矢を放つ。
スカッ……!
「げっ!?」
だが矢は七面鳥のはるか後ろを通りすぎてそのまま茂みの中に消えていった。