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◇◇◇ 淫蕩聖伝 ◇◇◇
官能リレー小説 - ハーレム

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◇◇◇ 淫蕩聖伝 ◇◇◇ 9

「よし、行くぞ」
「…!?」
そこに行ってみると一人の兵士が倒れていた。
兜のすぐ下…ちょうど眉間のど真ん中に矢が深々と突き刺さっており息は既に無い。
「…うっ…うぅ…うおえええぇぇぇ〜〜…」
望はまた吐いた。
昨日も吐いたのにまだ胃に物が残っていた事に本人も少し驚く。
そんな彼にディオナはやや呆れ気味に尋ねた。
「…大丈夫かぁ、お前…?」
「はぁ…はぁ…こ、この男は…?」
「斥候兵だよ。私らみたいに村に戻って来たヤツがいるかどうか確かめに来たんだ」
「…何も殺さなくても…」
「殺らなきゃコイツは仲間を引き連れて私達を追って来てただろう…そうなったら…」
「…お、俺達も捕まってた?村の人達みたいに…」
「…いや、より多くの死人が出てただろうな。私の弓の腕は今見ただろ?一個小隊とぐらいならサシで殺り合える自信はある」
そう言って矢の無い弓を構えて引き絞るポーズをして見せるディオナ。
望は思う。
(何か…殺伐とした世界だなぁ…)
彼の率直な感想であった。

村には武具と共に非常用の保存食の備蓄もあり二人はそれを朝食にした。
干し肉や乾パンのような物だ。
昨日今日と立て続けに人の死を目の当たりにして食欲なんて湧く訳が無い…と思っていた望であったが、いざ食べ物を目の前にすると物凄い勢いで食べ始めた。
「…もぐもぐ!むっしゃむっしゃ!んぐっんぐっ…」
昨日から何も口にしていなくて空腹だったのだ。
それを見たディオナは笑って言った。
「ハハハ…凄い食いっぷりだなぁ、そんなに慌てなくても無くならないからゆっくり食いな」
「むぐぅ…!」

そして食事を終えた二人…。
「ふぅ〜、食った食ったぁ…」
「…それじゃあ、そろそろ行くかぁ…!」
ディオナは腰を上げた。
「…あ、もう行くの?ディオナ…」
「ああ、それじゃあノゾム…達者でな!」
「おう!色々ありがとな!ディオナも元気で……………………って!!ちょっと待って!!ちょっと!!」
「何だよぉ?まだ何か用かい?」
「…え!?なに!?これは仲間になってくれる流れじゃないのぉ!?」
「“流れ”って何だよ?何で私が行きずりのお前とパーティ組まなきゃいけないんだ?」
「…いや、それは…!!……まあ、確かに…」
「じゃあそういう事で…」
「待ってくれえぇ〜!俺この世界の事なんにも解んないんだよおぉ〜!」
…と恥も外聞も無くディオナに泣きつく望。
まったく情け無いが今ここで見捨てられたらこの訳の解らない世界で野垂れ死ぬしか無いので必死だ。
そこまでされてはディオナも一片の憐憫の情を感じざるを得ない。
「はぁ〜、しょうがないなぁ…じゃあ次の街までは連れてってやるから、そこからは自分の力で何とかする事…良いな?」
「…!!…!!」
その言葉に無言のままコクリコクリと勢い良く首を縦に何度も振る望であった。

「いやぁ〜、ほっんとディオナさんには世話になりっぱなしで感謝感激雨あられ…何とお礼を申し上げれば良いか…」
「ああ、地に平伏して感謝してもらいたいね」
「OK、解った。機会があればな」
二人は街へと続く街道を歩いていた。
「それよりディオナ、この世界の事もっと教えてくれよ」
「そうだなぁ〜、じゃあ講習料金貨一億万枚」
「ほぅ…この世界の通貨は金貨かぁ…」
「ああ、他に銀貨や銅貨もある。通常、銅貨十枚で銀貨一枚、銀貨十枚で金貨一枚が相場だ」
「お札は無いの?」
「…オサツ?何だそりゃ?知らんな」
「そっかぁ…(小銭しか無いとか、買い物大変そう…)」
…そんな具合に望は色々な事を訊いていった。
ディオナとの会話で判った事は、この世界アトランティアは社会制度・科学技術共に中世レベルだという事だった。
各国は王や貴族達によって治められており、その下に騎士や平民がいる。
いわゆる封建制というやつだ。

電気はまだ無い、蒸気機関も無い、火薬も無い…その代わり魔法という物があった。しかし魔法は主に攻撃系や治癒系など戦闘に関する分野ばかり特化しており、その他の分野に関しては未発達らしい。
そもそもこの魔法というやつは誰にでも使える訳ではないのだ。
持って生まれた素質もあるが、そこから更に専門的な知識を修め、長年の訓練を経て、それで初めて使いこなせるようになる。

当然、使い手は経済的に余裕のある富裕層のみに限られてくる。
例えば王侯貴族や豪商の子弟達だ。
だが平民でも生まれつき強い魔力を備えている者はいる。
そういう者が魔法使いを目指そうと思えば二つの道がある。
一つは各地にある魔法学校が設けている“特別枠”から特待生として入学する事…特待生は授業料が免除されるが、これには厳しい選抜試験をクリアせねばならない。
もう一つは神に仕える神官となる事…神殿で魔法を教わる事が出来る。
各地の神殿を束ねる組織“教会”は各国の軍隊とは別に独立した軍事力を有している。
ゆえに有力な戦力となり得る魔法が使える神官の育成に努めているのだ…。

「…どうして宗教組織が軍隊なんて持つ必要があるんだよ?」
望はふと疑問に感じた事を尋ねた。
古今東西、宗教団体が武器を手にすると大体ロクな事をしないものである。
ディオナは当然とばかりに答えた。
「そりゃあ決まってるだろ。人類の生存領域を魔族の侵略から守るためさ」
「ま、魔族だってぇ!!?」
「ああ、そうさ。魔王に率いられた魔物の軍勢だ。この世界の歴史はいわば人類と魔族の戦いの歴史と言って良い…」
そしてディオナはこのアトランティア世界の歴史をざっとかいつまんで教えてくれた…。

 * * *

…魔族が人類の前に最初に姿を現したのは今から約千年前の事だった。
彼らは“魔界”と呼ばれる異世界からやって来た。
その頃の人間は、エルフ、ドワーフ、ドラゴニュート(竜人)、獣人などの亜人種らと共に、この世界に四つある大陸に繁栄し各地に国を築いていた。
魔界の“扉”はある日とつぜん何の前触れも無く出現した。
北の大陸の人も住まない凍土だった。

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