下宿少女 40
「ほら、飯の準備だろ?行くぞ。」
「む〜…」
千夏は不満そうな様子で付いてくるのだった。
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「ふう…」
晩ご飯の後、俺は風呂に入っていた。
別荘自体がでかいだけあって風呂も大きいな…
まぁ、さすがに銭湯とかほどではないが。
「ゆう〜お湯加減どう〜?」
来た。
思ったとおりだ。
「ああ、ちょうどいいよ。」
「よかった〜」
耳を澄ませば衣服を脱いでいるのか布が擦れる音が聞こえてくる。
このままいけば以前の二の舞だろう。
だが…
「やっほ〜!!!お背中流しに来…」
ガッ!!!
「………ガッ?」
扉は千夏が力を込めても微動だにしなかった。
当然だ、スライド式のドアのこちら側には風呂掃除用に立てかけてあったブラシを置いているのだから。
「あれ?あれ?な、なんで開かないの?」
「ふっ…お前の行動はすべて読めてるんだよ!!!それに対策をするのは当然だろ!!!」
「な、なんだって〜!!?」
俺の言葉に対してオーバーリアクションを返す千夏。
フッ、勝った…
「ええ〜入れてよぉ…」
「ダメ。」
「…どうしても?」
「どうしても。」
「………」
千夏の反応がなくなった。
諦めたかな?
「…ううぅ……お願いゆう、いれてぇ…」
急に色っぽい声を出し始める千夏。
また馬鹿を始めたか…
「いれてぇ…切ないのぉ……もう我慢できないのぉ…」
「わざとらしく勘違いされるような台詞を言うような子は絶対に入れません!!!」
「え〜…せっかくもう一回、ゆうの体を観察しようと思ったのにぃ…特に、おちんち…」
「帰れぇぇぇぇぇ!!!!!」
「うわっ!!!ゆうが怒った!!!」
俺が大声を張り上げると千夏が去っていく気配を感じた。
まったく…いちいち人に疲労を与えてくるやつだ。
俺は風呂に入ってリフレッシュするどころか、精神的な疲れを増やして風呂を後にするのだった。
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時は過ぎて就寝時。
しかし、俺はまだ眠ることなどできない。
なぜなら…
ガチャガチャ…
来たよ…
「ゆう〜!!!開〜け〜て〜よ〜!!!」
「駄目だ!!!」
またしても懲りずに俺の元へやってきた千夏。
何がなんでもこいつを室内へ入れることはできない。
入れたら最後、なし崩し的にそういうことが始まってしまうだろう。
すでに二人も手を出しておいてとか言われそうだが、俺は決して誰にでも簡単に手を出すような馬鹿ではないのだ。
…自分で言ってて、全くというほど説得力が無い気もするが。
「むぅ…仕方ないなぁ………じゃじゃ〜ん!!!マスタ〜キ〜〜〜!!!」
どこぞの青い猫型のロボットを真似たような声を張り上げる千夏。
やはりそうきたか…
「んじゃ、さっそく…えい!!!」
カチャリ…
ガチャン!!!
「………」
千夏が開けた鍵をすぐにロックする。
痛いほどの沈黙が流れた。
カチャリ…
ガチャン!!!
カチャリ…
ガチャン!!!
カチャリ…
ガチャン!!!
「ちょっと!!!何なのよもう!!!」
しばらくの間、鍵の開け締めの応酬が続いたが、先に折れたのは千夏だった。
「ふん!!!次会ったら覚えてなさいよ!!!」
そんな捨て台詞を残して、千夏の気配は遠ざかっていく。
俺は念のためしばらくの間、ドアの前にいたが千夏が再び戻ってくることはなかった。