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下宿少女
官能リレー小説 - ハーレム

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下宿少女 39


ガサガサ…

ふいに、葉が何かに当たる音がする。
少女がそちらの方を向くと、ちょうど少年がやってきたところだった。

「あ………」

「よっ!!!もしかしたらいないかと思ってたけど…ラッキーだったな!!!」

「あ…ああっ…」

ギュ…

「って…おい!!?」

少女は少年に走り寄ると強く抱きつく。
少年から困惑の声が上がった。

「おいおい…どうしたんだ?」

「………やだ。」

「はぁ?」

「ヤダッ!!!行っちゃヤダッ!!!もっと一緒に………」

少女は生まれて初めて出すような大声で少年を引き留めようとする。
少年は困ったような顔を浮かべ、少女に語りかけた。

「それは無理だ…」

「ヤダッ!!!ヤダッ!!!嫌だよぅ…」

少女の目には大粒の涙が浮かび、溢れだしていた。
少年は手を少女の顔に当て、涙を拭ってやる。

「俺は帰らなきゃダメなんだ…」

「せっかく会えたのに……せっかく仲良くなったのに……せっかく………」

「泣くな…お前の泣いてる姿は見たくない…」

「………ぐすっ」

少年は少女の涙を止めようと考えを巡らす。
なかなかいい案は出てこなかったが、口は勝手に動いていた。

「今回は帰るけどさ、もし次に来ることがあったらここでまた会おう。」

「ふぇ…?」

「いつになるかは分からないけどさ、お互いにこの近くに来たときは必ずここに来るんだ。そうすれば、きっとまた会える。」

「…絶対?」

「ああ、だから泣くな。お前は笑っている顔が一番かわいいと思う。だから笑っていてくれ。」

結局少年に出来ることは、そんな不確かな約束だけでーーー
しかし、それ以外には何も出来なくてーーー
そんなのは何も出来ないと同じことなのにーーー
それでも…

「………うん!!!」

少女は笑った。
必ずまた会えると疑わない少女が眩しくて…
少女が見せる笑顔が愛しくて、少年は必ず約束を果たすと心に誓うのだった。

「ああ、こんど会うときは友達も連れてくるよ。
………そういえば、俺たちってお互いの名前を知らないんじゃないか?」

「あ…」

少年と少女は今更の事実に呆然と顔を見合わせる。
しばらくして同時に吹き出した。

「ははははは!!!ずっと一緒にいたのにな。」

「あははは…本当、気が付かなかった。」

「じゃあ、最後に自己紹介でもするか?
俺は天野 勇。よろしくな!!!」

「ゆう……よろしく!!!あたしの名前はーーーーーー」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

蘇ってきた記憶は、とても大切な思い出だった。
なぜ忘れていたのだろう。
確かにあの後、俺はとある理由で親戚の家に引っ越したが、それでも忘れてはならない記憶だろうに。
自分の愚かさに腹が立つ、彼女はあれからずっと、あの場所で待っていてくれていたのだろうか。

ガサガサ…

視界が開ける。
川岸には一人の少女が座っていた。
昔と同じように。
初めて会ったときとは違い、笑顔で。

「よっ!!!待ったか?」

「…今来たところ、って言いたいけど………さすがに待たせすぎじゃない?」

「うっ…それは………ごめん。」

「今年も来なかったら、さすがに諦めるところだったよ?」

「悪かったよ…」

「でも………いいや!!!約束、守ってくれたね。」

少女は俺の顔を見て微笑んでくれる。
その姿が昔の記憶と重なった。

「久しぶり、ゆう!!!」

「ああ、久しぶり…千夏。」

二人で顔を見合わせ笑い合う。
俺はようやく約束を果たせたのだった。


〜エピソード9 オモイデノショウジョ〜

千夏との記憶を思い出し再会した後、俺たちは二人で別荘へと戻った。
千夏はいつにも増してベタベタとしてきたが、俺は別荘の中に入るまでは振り払うことはしなかった。
そして現在…

「やだ〜!!!やだやだや〜だ〜!!!」

「仕方ないだろ。」

別荘の中に入り、絡めてきた腕を解こうとした俺は千夏に駄々をこねられていた。
さすがにみんなの見ている前でそういうことをするのはな…
俺の精神上よろしくない。
そんなことをした日にはきっと小春は涙目になり、秋穂はゴミを見る目で俺を見て、冬美さんにはニコニコとした黒い笑顔を向けられるんだ。
想像するだけで地獄だった。

「………だめ?」

「昔みたいに言ってもだめ!!!そんなキャラじゃないだろ、お前。」

「ちっ…」

千夏はわざとらしく舌打ちをし、顔を背ける。
悪の幹部さながらの悪い顔だった。

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