PiPi's World 投稿小説

下宿少女
官能リレー小説 - ハーレム

の最初へ
 36
 38
の最後へ

下宿少女 38


「ああ〜!!!やっと見つけた…」

「………?」

ふいに下から声がしたので見てみると、少年が疲れた顔でこちらを見上げていた。
少女を探すためにあちこちを見て回ったためか、うっすらと汗が滲んでいる。
しかし、少女にはそんなことを気にかける余裕などなかった。

「あ……え?………」

「おい、何やってんだ?早く降りてこいよ。」

「あ………うぁ………」

みるみるうちに少女の顔が青ざめていく。
少年はようやく少女の異変に気がついたようだった。

「おい!!!大丈夫か!!?」

「ああ………た、高い………」

必死になって気がついていなかったが、意識すると随分と高い位置まで登っていたようだった。
足が竦み、体は震えだす。

ミシッ…

「ひぃ!!?………」

少女が跨った枝が、きしむ音が聞こえた。
少女はもはや恐怖に支配され、とても自力で動ける状態ではなかった。

「ああああ…」

「少しだけ待ってろ!!!今行く!!!」

そう言って少年は少女の登った木をするすると登っていく。
しかし、少女が乗った枝に乗ろうと体重をかけると、またしてもミシッと嫌な音が響いた。

「くそ…」

少女のいる枝は明らかに二人の体重を支えきれないだろう。
少年は必死に手を伸ばした。

「ゆっくりでいい!!!こっちまで来るんだ!!!」

「うぁぁぁぁぁ………」

しかし、少女は錯乱しているのか反応がない。
ただ小さな悲鳴を漏らすだけだった。

「しっかりしろ!!!!!」

「ッ!!?」

少年は少女が今までに聞いたことがないような大声を張り上げる。
少女の意識が少年の方へ向いた。

「大丈夫だ。まずはゆっくりとこっちまで来い。」

「…ううっ………ぐすっ………」

「ゆっくりでいい。下を見ずにゆっくり来るんだ。」

少年は少女を安心させるように優しく微笑む。
少女の目には相変わらず涙が浮かんでいたが、それでも少しずつ移動を始めた。

「そう、ゆっくり………よし!!!」

かなりの時間をかけ、何とか少年の元へ帰ることに成功する。
それから少年は少女に足場を教え、木から降りるのを補助する。

「次はここに足を伸ばせ。怖かったら、ゆっくりでいいからな。」

「…ひっく……うん………」

「よし、うまいぞ。」

それから30分をかけて、ようやく少女は地上に足を付けることが出来た。

「よくやったな、えらいぞ。」

「…ううっ………」

少年は少女の頭を撫でてやる。
少女の目には涙が溜まっていたが、それでも心地良さそうであった。

「でも、何であんなとこに登ったんだ?危ないだろ。」

「…だって、鳥さん………」

「鳥?」

少年が木の上を見上げると、たしかにそこには鳥の巣があった。
それだけで、少年は少女の行動の意味を察したようだった。

「そうか、小鳥を助けてあげたのか?」

「……うん。」

「お前は優しいんだな?」

そういって少年は少女を撫でながら微笑みかける。
そのとき少女は胸の鼓動が速まるのを感じた。
それがさっきまで感じていた恐怖によるものか、それとも別の何かが原因なのかは少女には分からなかった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

翌日、少女は一人で川岸にいた。
少年は昨日、分かれるときに明日帰ると言っていた。
もう帰ってしまったのだろうか…
そんなことを考えながら、少女は静かに川の流れを見ていた。
その表情はとても寂しげだった。

SNSでこの小説を紹介

ハーレムの他のリレー小説

こちらから小説を探す