下宿少女 33
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「でけぇ…」
「だから言ったでしょ…」
あれから2日後、俺たちは電車と徒歩で山の中の別荘まで来ていたのだが…
着いた場所には、お屋敷と呼んでも過言ではない建物が建っていた。
「あはは…」
「たしかに、初めて見る人にとっては珍しいかもしれないわね。」
「…まぁ、千夏さんの家の別荘は結構、大きめですよね。」
なにこの人たち…
もしかして、住む世界が違うってやつ?
お嬢様なの?
一般人の俺と小春からすれば、ありえない大きさなのだが。
「とりあえず、中に入ろう?」
そういって鍵を取り出す千夏。
鍵まで豪華そうだな…
「あ、ああ…」
俺は呆然と、千夏に手を引かれて別荘の中へと足を踏み入れるのだった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「広いな…」
玄関から中に入ると、そこは映画やドラマに出てくるような空間が広がっていた。
俺は圧倒されてしまい動けないでいる。
「それじゃ、みんなはいつもの部屋を使ってね。ゆうはこっち、着いてきて。」
「それじゃ、ゆう君、また後でね」
「ああ…」
途中まで全員で行動し、ドアが並んでいる廊下までやってきて分かれる。
俺は廊下の突き当たりの部屋に案内された。
「ここが、ゆうの部屋ね。」
「ああ、ありがとう。」
千夏と一緒に室内へ入る。
そこそこ広めの部屋で、ベッドやテレビが備え付けられていた。
「………」
「ん…どうかしたか?」
部屋に入ってから、千夏は黙って俺の様子を伺っているようだった。
心なしか不安そうな顔をしている。
「いや、こんな別荘を持ってるなんて、引かれちゃったかな…って思ってさ。」
コイツはそんなことを心配しているのか…
まったく…
「別に。少しはビックリしたけど、それで千夏に対する態度を変える気なんかねぇよ。」
近づいて頭をポンポンと軽く叩いてやる。
それだけで千夏には笑顔が戻った。
「にひひひ…」
「な、なんだよ…」
いや、戻ったんじゃない。
千夏の顔には怪しげな笑みが浮かび、両手をワキワキと動かしている。
「とりゃ!!!」
「うわっ!!?」
そのまま飛びかかってきた。
突然の衝撃に耐えられず、二人でベッドに倒れ込む。
「うへへへへ…ゆ〜う〜」
「馬鹿!!!離れろ!!!」
そのまま俺の体に絡み付くように抱きついてくる。
鼻の奥をふわっと甘い香りがくすぐり、顔が暑くなるのが分かった。
「ん〜?顔、赤いよ〜?うりうり〜」
「ちょ…」
千夏は俺の頭を抱きかかえ、自らの胸へと押さえつける。
途端に、甘い香りが強く感じられ、柔らかい感触が伝わってくる。
「どう?ムラムラくる?」
「女の子がそんなこと言うんじゃありません!!!」
「え〜…」
まったく、コイツには異性への警戒心というものが足りないんじゃないか…
ふと、イタズラ心が湧いた。