下宿少女 4
「私たちはね、あなたの家に下宿しているのよ。」
俺の問いにはおっとりとした少女が答えてくれた。
下宿?俺の家に?何も聞いてないぞ!?
その時、家の電話が鳴り始めた。
俺は目の前の少女達にことわりをいれ、電話をとる。
相手は現在、一番話がしたい母さんからだった。
『もしも〜し、ゆう?そろそろ着いたかなぁ?』
「もしも〜し…じゃねえ!!!なんなんだよこれ!?下宿なんて聞いてねぇぞ!!!!!」
『あれ?言ってなかったっけ?』
「一ッ言も聞いたことがねえよ!!!なんだ?あれか!?実はあんた、わざとやってんのか!?そーやって俺が困ってる姿を見てほくそ笑んでんのかァァァァァ!!?」
『な、なによう…別にそんなこと…』
「じゃあ、どーゆーことなんだよォォォォォ!!!!!」
「ゆ、ゆう君…落ち着いて…」
突然ぶち切れた俺を落ち着かせようと、小春が走り寄ってくる。
それに気をとられて俺の口撃が一瞬止む。
その隙に母さんは自分が言いたいことだけを並べ始めた。
『家事とかはみんなで協力してしなさい。生活費は毎月振り込むから足りなかったら連絡すること。いい?分かった?』
「ま、まて!!!こっちには言いたいことが山ほど…」
『それじゃ、小春ちゃん。ゆうのことよろしくね〜シーユー』
『ツーツーツー…』
「切れた…」
ガックリと肩をおとしトボトボと元の位置に戻る俺。
後ろから小春が心配そうな目で見てくるのが心苦しい。
「それじゃ、まずは自己紹介でもしましょうか。」
おっとりとした少女が明るい声で提案する。
俺は未だに納得はしていないが、名前も知らないのでは不便だろう。
素直に従うことにした。
「まずは私ね。
私の名前は白川 冬美(しらかわ ふゆみ)この明後日から高校二年生になるわ。よろしくね♪」
「はぁ…よろしくお願いします…」
俺は目の前の人物…冬美さんに挨拶を返す。
この人は出会ったときからニコニコと本当に楽しそうだ。
イスに座って足をパタパタと動かしている様子は、とても年上には見えない。
「私ね、ずぅーと可愛い弟が欲しかったの♪私のことは本当のお姉さんと思っていいからね♪」
「はぁ…」
心底うれしそうな冬美さんに曖昧な反応を返す。
にもかかわらず、冬美さんはずっと笑顔だった。
そんなに弟が欲しかったのか?
「それじゃ、次は…」
そう言って冬美さんは 黒髪の少女の方を見る。
次に話すように促しているのだろう。
少女は心底嫌そうな顔をして話始めた。
「…紅崎秋穂(べにざき あきほ)中学三年生になります。
出来る限り私には関わらないでくださいね、変態さん?」
「だ、だから悪かったって!!!わざとじゃないんだよ!!!」
「…ホントですかねぇ…ま、私にまで被害が及ぶようでしたら容赦なくロリコン認定して警察に突き出しますから、覚えておいてくださいね?へ・ん・た・い・さ・ん?」
だ、駄目だ。俺を見る目が生ゴミを見る目と変わらない…
これは完全に嫌われたかな…
「も〜秋穂!!!あたしがいいって言ってるんだから。あんまりイジメたらかわいそうでしょ!!!」
「…ですけど…」
「とにかくいーの。はいっ、この話は止め!!!」
「…分かりました。」
おおっ!!!何かよく分からんが、俺が裸を見た少女がかばってくれている。
元気もよさそうだし、この子とはうまくやっていけるかも…
「それじゃ、次はあたしね!!!
あたしの名前は青柳千夏(あおやぎ ちなつ)!!!
明後日から高校一年生。
得意なことはスポーツ全般。
よろしくね!!!」
「あ、ああっ。よろしく。」
おおう…あまりの元気の良さに少し戸惑ってしまった。
しかし同い年か…
なおのこと千夏とはうまくやっていけそうだ。
「あ、ところで…」
「ん?どうかした?」
「裸を見たってことは、とーぜんお嫁さんにしてくれるんだよね?」
ぶふぉ!!!??
な、なんだそりゃ!?
え?え?マジで言ってんの?
「いや〜突然ドアが開いた時はびっくりしたけど、よく見たら君って結構カッコいい顔してるし、裸を見た責任は取ってもらわないとね〜」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!!確かにあれは何も考えずに開けた俺が悪かったけど…いきなり結婚なんて…」
「ん〜…じゃ、彼氏からでいいよ!!!」
「それって結局、同じじゃないか!!?」
駄目だ…この子は違う意味でぶっ飛んでいる。主に頭が。
だ、誰か俺の味方はいないのか!?
冬美さんはニコニコと事の成り行きを見守ってるって感じだし、秋穂は相変わらず…いやっ、さっきよりも冷たい、まるで汚物を眺めるかのような視線を送ってきてるーーー!?
こんな時こそ…小春!!!
小春に何とかしてもらうしかない!!!
小春…
ダンッ!!!
うおッ!?急にテーブルをたたきつけたような音が響く。
まあ、ようなではなく実際その通りなのだが…
こ、小春…?