先祖がえり 8
「ああ、いや、そうじゃない。狐太郎には悪いが転校してもらうことになるんじゃ・・・」
「・・・転校?」
「うむ。真の者になった木崎の者が一般の学校に通うなどあり得ないからな。今後は我が木崎コンツェルンが持つ学校に通ってもらう・・・よいか?」
「・・・・・・」
学校というものに未だに恐怖心を抱いているのだろう。狐太郎は不安そうな顔で俯く。
「なに、心配はいらん。狐太郎は好きな時に学校に行けばええ。それに先生も生徒も、狐太郎第一に動いて貰う。元よりそのように作ってある学校じゃ。」
「・・・そうなの?」
不安そうに留美を見上げる狐太郎。
「ええ、そうよ。コタちゃん。なにより、コタちゃんの生活の全般、および学校での生活を監督するのは私の仕事なのよ?」
なるほど。学校生活においても留美が狐太郎のことを守ってくれるようだ。それを聞いて少し安心する狐太郎。さらに、続けてお願いをすることにした。
「あの・・・」
「なんじゃ?」
「あの・・・もしよければ・・・お姉ちゃんをその学校の先生にしてください・・・」
そうすればもっと安心することが出来る。ずうずうしいとは思いながらもお願いをしてみる狐太郎。しかし返ってきたのは
「ぷっ、あははははは。」
という留美の笑い声であった。
「・・・なにが可笑しいの?」
勇気をだして言ったことだけに笑われるとは心外な狐太郎。そのまま留美を見つめる。
「ああ・・・ごめんなさいね、コタちゃん。でも安心して。お姉ちゃんはその学校の校長先生なの。」
「ふぇ?そうなの?」
「ええ。その方がコタちゃんをしっかりお世話できるし・・・なにより私以外の人にコタちゃんを任せるなんて怖くて出来ないわ。」
これは狐太郎にとって好都合である。何と自分の通うことになる学校のトップが自分の大好きな留美である。これなら大丈夫そうだ。
「・・・なら、行く。」
「おお、そうか。分かった。ならそういう手筈にしよう。」
「コタちゃん、学校は行きたい時で良いからね。いやだったらお姉ちゃんも学校休んで一緒に居てあげるからね。」
「うん・・・ありがとう。お姉ちゃん。」
さっきまでの不安そうな顔が一変、笑顔になった狐太郎は留美の大きな胸に抱きつく。
「さて・・・そろそろわしは行くかの・・・留美、後は任せたぞ。」
「ええ、お爺様。お任せください。」
「うむ。それじゃあ狐太郎。またな。」
「うん!おじいちゃん!」
そういって退室する源之助。
「さあ、コタちゃん。私たちも行くわよ。」
「ふぇ?行くってどこに?」
「私たちの『家』よ。コタちゃんの通う学校の近くにね、コタちゃんのお屋敷を建てたの。ああ、安心して。特に外に出ること無くここ木崎コンツェルンから直通でいけるから。」
「え?!そうなの?!」
「ええ。それじゃあ行くわよ。 っと、その前に、コタちゃんのお着替え、まだだったわね。」
「あ、そうだった・・・」
「ふふっ。お姉ちゃんがお着替えしてあげるからね〜♪ 加奈ちゃん。手伝ってくれるわね?」
「はい!勿論でございます!さ、狐太郎様。こちらへ♪」
自分の手で狐太郎を着替えさせることが出来て嬉しいのか二人とも今にも歌いだしそうな勢いである。
こうして狐太郎は二人の手によって着替えることとなった。
着替え終わった後・・・
「さあ、コタちゃん。行きましょうか。」
そういって当たり前かのように腕を広げて狐太郎を抱き上げようとする留美。
「・・・待って。お姉ちゃん・・・」
「ん?どうしたの?」
何かあったのだろうか、首をかしげる留美。
「あの・・・さっきはごめんなさい。」
「さっき?」
「・・・お姉ちゃんが僕の耳を触った時大きな声出しちゃって・・・」
どうやらそれが気にかかっていたのだろうか。俯きながら謝る狐太郎に優しい笑顔を向ける留美。
「あらあら。大丈夫よ。」
「それでね!・・・」
まだ何かあるのだろうか、一度パッと顔をあげた狐太郎だが、また俯いてゴニョゴニョと言っている。
「どうしたの?」
「あ、あの・・・お姉ちゃんなら・・・いいよ?」
「え?」
「ぼ、僕の耳・・・触っても・・・お、お姉ちゃんなら・・・」
頬を赤く染めながらつぶやく狐太郎。留美はそんな狐太郎が可愛くて可愛くて仕方が無い。思わず抱きしめようとするのを必死で抑える。
「い、良いの?コタちゃん・・・?」
「・・・うん。」
「じゃ、じゃあ・・・触るわね?」
実は狐太郎の耳を触りたくて仕方なかった留美。その耳は狐太郎の心を表すかのようにピコピコ動くのである。そうして・・・
サワッ・・・
「ひぅっ!!」
「あ、ごめんなさい!大丈夫・・・?」
「う、うん。大丈夫だから。もっと触っていいよ?」
「そ、そう?じゃあ・・・」
サワサワ・・・サスサス・・・
「ふぅ〜ん・・・はぁ・・・」
「ああ・・・なんて気持ちいいの?コタちゃんの耳、フサフサでぇ〜・・・」
サワサワ・・・ワシャワシャ!
だんだんと激しくなる動き。留美は顔を上気させてその肌触りに酔いしれている。
「ふっ、ふやぁん!お姉ちゃぁ〜ん!」
「・・・あ!ご、ごめんなさい!コタちゃん!」
やっと我に返った留美はその手を離す。
「ううん・・・大丈夫だよ。どうだった?」
「ええ・・・とっても気持ちいいわ・・・」
照れているのだろうか、さっきまで触れていた耳もピコピコ動いている。
さらに狐太郎は