先祖がえり 68
「・・・こんなに大きい部屋・・・それに狐太郎様のお部屋に近いなんて・・・」
改めて自分の言葉で事実を確認する真由。特に後半の言葉を口にした時
「・・・えへぇ〜、狐太郎様ぁ♪」
ゆっくりと頬が緩みだし、ついにはニヤニヤとだらしの無い顔になって
「んん〜!狐太郎様ぁ!」
そう言ってベットに飛び込んだ真由は枕を抱いて
「あぁ・・・狐太郎様ぁ・・・♪」
ギュッと枕を抱きしめる。
(・・・狐太郎様・・・私も・・・真由もあなた様のことをこうやって抱き締めさせていただきたいですぅ・・・)
頬を赤く染めながら妄想にふける真由。もう完全に狐太郎に骨抜きにされている。
しばらくそうやってベットの上でゴロゴロしていた真由。すると急にハッとなって起き上がり
「あっ!こうしちゃいられないわ・・・」
そう言って慌てて荷物整理を始める真由。なぜなら真由の頭の中には
(きちんと整理しておかないと・・・それに時間も限られているわ。もし遅れてしまったりなんかしたら大変!)
そう、さっきの美咲と加奈の言葉があった。
こうして真由は時々狐太郎のことを思い出してニヘラ〜と笑いつつも荷物の整理をしていった・・・
一方静香の部屋・・・
「・・・・・」
無言で部屋を見回す静香。なるほど、加奈や美咲の部屋ほどではないが十分な大きさのある部屋である。
それを確認すると一人になって気楽になったのか
「・・・ ♪〜」
時折鼻歌を交えながら荷物の整理をしていく。
しかしその途中狐太郎のことを思い出すと
「・・・・・」
作業をやめ、動かなくなり
「・・・好き・・・///」
一言ポツリと言って、顔をみるみる赤くしていく。どうやら彼女は普段はクールながら、好きな人はとことん好きになっていくタイプらしい。
「・・・好き・・・好きぃ・・・大好きぃ・・・♪」
その溢れる想いを言葉にして出していく静香。その目は潤んでいて、顔は上気しており、まさに「恋する乙女」である。
すると
「・・・いけない。」
そういってまた表情を戻し、作業に戻る静香。
こうして静香は時折頬を染めながら作業を進めていった・・・
亜紀の部屋では・・・
「すごいのね・・・一人一部屋、しかもこんなにしっかりしたお部屋を・・・」
亜紀も静香同様部屋を見回す。
「それに・・・狐太郎様と同じ屋敷に住むなんて・・・あぁ、なんて嬉しいのかしら♪」
学校では生徒達の優しいお姉さん役の彼女。修道女のように清楚で優しく母性溢れる彼女は狐太郎と屋根を同じくして寝れることを心の底から嬉しく思う。
「いつか・・・いつか狐太郎様のことを留美様のように抱っこして、頭をナデナデしたいですぅ・・・」
母性に関しては留美や加奈、美咲に負けない勢いの彼女。むしろ嫉妬心の少ない彼女の方がより母性が強いと言えようか。
亜紀はその場面を想像すると赤く染まった頬に手を当てヤンヤンと悶える。
「・・・っと、こうしちゃいられないわ。夕食の準備だったら私も頑張らないと!」
ハッと気がついた彼女は、家事が上手なのをアピールするため頑張ろうと自分を励ます。
「そうと決まれば、まずは部屋の整理ね!」
そうして意気揚々と部屋の掃除をしていく亜紀であった・・・
そして千恵の部屋・・・
「荷物整理かぁ・・・後で良いわね。」
早速持ち前のめんどくさがりの性格を発揮する千恵。そもそも家事が苦手な彼女。掃除もその中に勿論入っている。
そう言うとベットに横になり
「ふぅ・・・うふふっ♪ 狐太郎様かぁ・・・」
狐太郎の姿を思い出す千恵。言動はともかく、どこか男勝りな性格をしている彼女ゆえ、異性に恋などしたこと無い。
つまりこれは彼女の初恋でもあった。
彼女は生まれて初めての感情に少し戸惑いながらも
「・・・ふふっ、お姉さんが可愛がってあげるからね?・・・」
大人の余裕を見せようとする彼女。(といっても実際に狐太郎に会うと何を言ったらいいのか分からずアワアワするのだろうが)
すると彼女は急に起き上がり
「・・・それにしても加奈様や美咲様・・・胸大きかったわね・・・なんであんなに大きくなるんだろ・・・」
未だに解決していない話題を思い出す。しばらく思案していたが
「・・・ま、いっか。そのうち分かるわね。」
考えるのがめんどくさくなったのか、そのまままた寝転ぶ。普段からこんな生活でよくその体型を維持できるもんである。
しばらくそうしていると
――――――コンコンッ
千恵の部屋をノックする音が響く。
「は〜い、どうぞ〜?開いてま〜す。」
のんきに間延びした声を出して返事をする千恵。すると入ってきたのは