千恵も止まる気配は無い。


震える狐太郎。加奈が間に入って狐太郎を守ろうとする。

「御二方、やめてください。」

しかし

「・・・？　あなたは・・・？　ちょっとすいません・・・」

「通して下さい。抱っこしたいんです・・・」

目の前に現れたのが誰なのか分からない様子の二人。加奈の静止すら効かない様子だ。

もうダメか・・・その時

「・・・あなた達、やめなさい。」

美咲が間に入ってくる。

「藤宮・・・先生・・・？」

「あの・・・どいてください・・・」

「・・・園山先生？」

「・・・はい？」

「・・・まだ授業に関する資料が出て無いようですが・・・提出期限、今日にしましょうか？」

「ええっ？！そ、そんな！！・・・あれ？」

急に仕事の話をされ正気に戻る亜紀。

美咲は続けて

「・・・上村先生・・・あの書類。今ください」

「む、無理ですよぉ！だってまだ全然！！・・・ん？」

千恵も元に戻る。

それを見た美咲は

「ふぅ・・・大丈夫ですか？狐太郎様・・・」

そういって狐太郎の頭を撫でる。

「よしよし・・・コタちゃん、もう大丈夫よ・・・」

そういって留美は狐太郎の背中をさする。


「留美様・・・私は少しあの二人と話をしてきます。」

「・・・ええ。わかったわ。コタちゃんは任せて。」

美咲は留美に狐太郎を任せると

「・・・あなた達、ちょっとこっちへ。」

千恵と亜紀を部屋の隅に呼ぶ。

「・・・せ、先生・・・」

「あの・・・これは・・・？」

いつもとは別次元の怒りを見せる美咲に怯える二人。

「・・・あなた達、覚えて無いの？自分がどれほど罪深いことをしたのか・・・」

「えっと・・・あ・・・」

「確か・・・！！」

そろって慌てた顔になる二人。どうやら思いだしたようだ。

「あ、あわわわわ！！ち、千恵ちゃん！！」

「あ、亜紀ちゃん・・・どうしよう！！」

軽いパニック状態の二人。そんな二人に

「気がついたなら謝ってきなさい！！」

美咲の厳しい言葉が飛ぶ。

「「は、はいいぃぃぃ！！」」

二人はそろって狐太郎の元へと急いだ。



「も、申し訳ありませんでした！！」

「どうか、どうか許して下さい！！」

懸命に頭を下げる二人。留美と加奈は二人をきつく睨んでいる。狐太郎を怖がらせた張本人であるから当然だろう。

しばらく謝り続ける二人。

すると

「・・・いいよ・・・」

狐太郎が口を開いた。それと同時に

「ほ、本当ですか？！」

「ああ・・・ありがとうございます！！」

ガバッと頭を上げたかと思うとまた頭を下げる二人。

その様子を見ていた美咲は

「・・・どうやら許していただいたようね・・・さあ、仲直りの握手をしなさい。」

もはや恒例行事となっている握手。美咲は一旦部屋の隅に二人を呼ぶと、真由と静香の時と同様に狐太郎との握手の方法をレクチャーする。


そして

「あ、あの・・・園山　亜紀です・・・さ、先ほどは申し訳ございませんでした！！　その・・・亜紀って呼んでください・・・」

「わ、私は上村　千恵ですっ！！ち、千恵って呼んで・・・ください・・・」

亜紀は謝りながら、千恵は呼び捨てされる経験が少なくて恥ずかしいのか、後半は小声で自己紹介をする。




今までと同様に握手、ハグ、匂いの確認を済ませる二人と狐太郎。

するとそれらが終わった時

「・・・お姉ちゃん・・・僕・・・眠たい・・・」

そう言ってまた留美に抱きつく。後ろの方では千恵と亜紀が「ああ・・・狐太郎様にギュッてされました・・・」「か、可愛い・・・なんて可愛さなの・・・」などとつぶやいていたが、狐太郎には聞こえない。

「あらあら・・・お家で寝る？」

「・・・うん・・・」

この一言で今日はもう帰宅することが決定した。

「そう・・・じゃあ、美咲ちゃん。あなたはどうする？」

「私も屋敷に戻ります。ずっと狐太郎様のお傍に・・・」

「そう。じゃあ戻りましょうか。」

そう言って帰ろうとする留美、狐太郎、加奈、美咲。


その４人を呼びとめる声が発せられる。


「「「「待ってください」」」」

真由、静香、千恵、亜紀の４人である。


「ああ・・・そうだったわね。えっと・・・あなた達、今日の授業はもう良いわ。先生には私の方から言っておくから。」

振り返った留美は４人が言いたいことを察知した。

そして真由、静香の生徒組には今日の授業はもう良いと伝え、

「加奈ちゃん、美咲ちゃん。この子達も連れていくわよ？」

「はい、留美様。」

「え・・・あ、はい！留美様。」

加奈はあらかじめ知っていたので、美咲は自分も同じ方法でメイドになったことを思い出して話を理解する。


「それで・・・あなた達は・・・」

「あ、あの！　・・・私もお屋敷に連れて行ってはもらえないでしょうか？」

「わ、私！狐太郎様のお傍に居たいです！！」

各々お願いする千恵、亜紀の教師組。

「そう・・・なら、『メイド』になる？」

「え？」

「め、メイド・・・ですか？」