先祖がえり 62
(ああ・・・狐太郎様の立ち姿も・・・素敵です・・・なんと可愛らしい・・・)
(・・・可愛い♪)
その姿にさえも顔を赤らめる二人。
そして狐太郎は
―――――――キュッ、スンスン・・・
まずは真由に抱きつき、その匂いを嗅ぐ。
いきなり抱きつかれた真由は
「へ?こ、狐太郎様?!」
と驚いたが、すぐに
「・・・ああっ・・・狐太郎様・・・」
そう言って彼を包み込むように抱く。生徒と言えども母性溢れる彼女だからこそ自然と出来る動作だろう。
しばらく匂いを嗅いでいた狐太郎は
「・・・真由の匂い・・・覚えた。」
そう呟き真由を見上げ
――――――ニパッ♪
満面の笑みを見せる。それだけで真由は
「はうぅぅん!!こ、狐太郎様・・・可愛すぎですぅ・・・」
あまりの可愛さにクラクラしている。
それを尻目に狐太郎は静香に近づき
――――――キュッ、クンクン・・・
真由同様抱きつき匂いを嗅ぐ。
静香は終始無言だが
「・・・・///////」
顔がドンドン真っ赤になっている。
そして
「・・・これが静香の匂い・・・だね?」
そう言ってまた静香を見上げてニパッと笑う。
その瞬間
「・・・きゅう・・・」
変な鳴き声と共にボンッと顔が赤くなる静香。
狐太郎の方は一仕事終えたようにトテトテと留美の元に戻ると
「・・・お姉ちゃん♪」
また先ほどのように留美の腰に抱きついていた。
昼食も終えた一行は狐太郎の一言によって動きだす。
「お姉ちゃん、美咲のとこにも行こうよ。」
こうして一行は職員室を目指していた。
その途中
(・・・ねぇ、あなた達?)
狐太郎に聞こえない声で真由と静かに話しかける留美。
(・・・? なんでしょうか?)
(あなた達・・・このままコタちゃんと一緒の家に住みたいとか思ってる?)
そう、メイドのスカウトである。勿論最終的な決定の権限は狐太郎にあるのだが・・・
(!! で、出来るのですか?!)
(・・・?)
二人はその話に面白いほど食らいつく。(静香は首を傾げただけだが興味はあるようだ。)
(ええ。あなた達も噂として聞いたことは無いかしら?)
(え?・・・あ、あの狐太郎様と一緒のお屋敷で・・・というやつですか?)
(そうよ。あなた達と、あとコタちゃんの許しが出れば、あなた達は屋敷に使用人・・・いわばメイドとして住むことが出来るわ。どうかしら?)
真由は話を聞きながらみるみる笑顔になっていく。静香もだんだんと頬を赤く染めていく。
(な、なります!!ぜひ!!)
(・・・!!)
真由はズイッと顔を寄せて、静香はしきりに顔を縦に振っている。
(そう。なら・・・加奈ちゃん?)
(はい、留美様。)
(学校が終わったらこの子達を屋敷に案内するわよ。いいわね?)
(あ、はい。かしこまりました。)
留美の言いたいことが分かったのだろう。加奈はすぐに了解した。
そうこうしているうちに職員室である。
「美咲ちゃ〜ん。居るかしら?」
少し油断したのか、留美は中に誰が居るかを確認せず扉を開けた。
しかし、それが失敗であった。
「あら・・・校長先生。」
「えっ?あ、どうも。」
そこに居たのは美咲だけでなく、千恵と亜紀が居た。
留美が「あ、しまった!」と思うと同時に
「る、るるる留美様?!」
用がある時は当然確認して入ってくるものだと思っていた美咲は慌てている。
しかし全てはあとの祭り。
「・・・先生、この子は?」
亜紀が狐太郎を見つけてしまった。その流れで当然
「ん?あら、可愛い子・・・」
千恵も見つける。さらに
「千恵ちゃん。そのこともだけれど、さっき藤宮先生が校長先生のこと『留美様』って呼んでなかった?」
「え?あ、そう言えば・・・」
美咲のセリフにまで目ざとく気がつく。
すると狐太郎は
「・・・お姉ちゃん、この人たちは?」
「ちょ、ちょっと!コタちゃん!」
事をさらに混乱させる一言を放った。
「「お姉ちゃん? コタちゃん?」」
声をそろえる千恵と亜紀。それだけあれば二人も気づいてしまう。
「・・・ってことは・・・!!」
「・・・せ、先生・・・その子は・・・」
留美は大きなため息を一つつく。美咲もやってしまったという顔をしている。残りの加奈、真由、静香は動向を見守るばかりだ。
「・・・ええ。その通りよ。この子が狐太郎よ。」
そう留美が認めると案の定
「や、やっぱり・・・はぁぁ・・・なんて可愛いの・・・」
亜紀がにじり寄る。
「み、耳や尻尾もフサフサでぇ・・・可愛い・・・抱っこしたい・・・」
千恵もにじり寄る。
この二人の反応に狐太郎は完全に怯えている。
「お、お姉ちゃん・・・助けてぇ・・・」
留美の胸の中に顔をうずめ、強く、強く抱きしめてくる。
「あ、あなた達!!落ちつきなさい!!コタちゃんが怖がってるわ!!」
静止を呼び掛ける留美。しかし
「ああ・・・震えてる・・・可愛い・・・大丈夫よ?優しく撫でるから・・・」
なおも近づく亜紀。並んで
「ふふふっ・・・痛くしないからね・・・ちょっとだけ・・・」