先祖がえり 54
そのまま妖しい瞳を向けながら留美の乳首を吸っていく。
すると朝から母乳を搾っていないせいか、早くも
「ちょ、あ!ふああ!!お、おっぱいがぁ!!」
――――――プシュ、シュワぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
母乳が溢れ始めた。加奈はそれを逃さず吸い取ろうとする。
「・・・ズズズッ・・・ッチュ、留美様のおっぱいも・・・美味しいです・・・」
そう感想をもらしながらなおも母乳を吸う加奈。
その時
「バンッ!」
いきなり扉が開け放たれる。そして
「えっ? あうっ・・・・」
入ってきた者に当て身を受け、気を失う加奈。
「・・・大丈夫ですか?留美様・・・」
「え、ええ・・・なんとか。それより、あなたは?」
「私は源之助様の使いの者です。今、加奈様を元に戻しますので・・・」
源之助の使いを名乗る女性は小さな注射器のような物を取り出し
「・・・・・」
無言で気を失っている加奈に針を刺す。
「あの・・・それは?」
「これですか?えっと・・・説明が難しいですが、血清のようなものです。詳しい話は源之助様より御伺い下さい。・・・さて、もうこれで大丈夫です。」
そう言うと彼女は加奈の腕から針を抜き、綺麗に処理をしていく。
「・・・どうやら間にあったようじゃな・・・」
「あ、お爺様・・・」
そこに現れたのは源之助であった。
「お爺様、これは・・・」
「ふむ、どうやら加奈はお前たちの母乳を生で飲んでしまったらしい。」
「・・・と、言いますと?」
説明を受けるが話が見えてこない。留美は源之助に詳しい話を求める。
「うむ・・・お前たちの母乳にはあの暴走した狐太郎の狐の部分の力・・・まあ魔力のようなものが含まれておったのが分かった。」
「えっ・・・魔力・・・ですか?」
「そうじゃ。その力に当てられた者は自分を失い、その母乳の味に心を奪われてしまう。そのような力じゃ。」
「それで・・・」
「ああ。加奈はその力に当てられたらしい。でももう安心じゃ。まさに今日その血清が出来たところだったからな。」
どうやらギリギリ間に合ったらしい。しかし留美は新たな疑問を源之助に投げかける。
「あの・・・血清というのは・・・」
「ん?ああ。血清と言うのは名ばかりでな、この前狐太郎が暴走して、お前たちが気絶していた時、少しお前たちの母乳を採取していたのじゃ。
それを研究してみたら特別な力が混じっているということが分かっての。その効果を無くすためのもの・・・いわば血清を研究し作っておいたのじゃ。
まさに今のような状況を避けるためにな。」
「そう、だったのですか・・・」
納得する留美。その顔を見て源之助は
「さて、ついでにお前も、そこでのびておる美咲も血清を打っておきなさい。血清さえ打っておけばこれから先それぞれの母乳を飲んでも今の加奈のようになることは無い。」
「あ、はい。わかりました。」
「・・・では、留美様、こちらへ。」
さっきの女性が留美を呼ぶ。
「・・・少し痛みます・・・」
「・・・・・っ」
「・・・はい、終わりです。次は・・・」
そういって美咲を見る女性。それに気づいた留美は美咲の元へ近づき
「・・・美咲ちゃん、美咲ちゃん・・・」
「・・・んへぇ?」
気がつく美咲。留美の顔を認めると
「あ、留美様・・・加奈様は?」
「もう大丈夫よ。今治療してもらったわ。さあ、あなたもこっちへいらっしゃい?」
「ふぇぇ?・・・あ、はい・・・」
あまり様子が分かっていないまま先ほどの女性の元に連れてこられる美咲。
「さあ、美咲ちゃん。腕を出して?」
「え?・・・はい・・・」
「では、失礼します・・・」
まだ目覚めたばかりのせいかポケ〜っとしている美咲。その間に
「・・・はい、終わりました。」
「良かったわ・・・」
「・・・あの、留美様?」
安心したのも束の間、女性から声をかけられる留美。
「あ、はい?」
「皆さまに血清を打たせて頂いたので、皆さまはこれで大丈夫ですが、これ以上の被害を食い止めるためにも今保存している母乳を一度全て廃棄して頂けますか?」
「えっ?」
「ああ、ご安心ください。今、この時より後に出された母乳にはもう特別な力は入っていません。正真正銘健康な母乳です。ですが・・・」
そう、血清の接種前の母乳は何が起こるか分からない。納得した留美は
「美咲ちゃん、聞いてた?」
「え?あ、はい。聞いておりました。」
「そう、なら、お願い出来るかしら?加奈ちゃんはまだ起きないし、私はコタちゃんを部屋に残したままなの。」
「あ、そうでした・・・はい。かしこまりました。」
そういって作業に入る美咲。
「では、お爺様。ありがとうございました。」
「いや、よいよい。また何かあったらすぐに連絡を入れるのじゃぞ?」
「はい。」
「それから・・・いくら気絶しているとはいえ、加奈をベットで寝かせてあげなさい。 じゃあな。」
そう忠告して源之助は女性と共に帰っていく。
「・・・っと、美咲ちゃん。その前に、加奈ちゃんを御部屋に連れていきましょう?いつまでもこうだと風邪引いちゃうわ?」
「あ、はい。」
そう言うと二人は加奈をかついでメイド長室に連れて行き、ベットに寝かせ、布団をかけてやる。
「じゃあ私はコタちゃんのところに行くわね?」
「はい、処理しておきますわ。」
そういって二人は別れた。
部屋に入った留美は少し涙を浮かべている狐太郎を見つけた。