先祖がえり 29
「そう・・・悪いけど、夕飯の準備お願いできるかしら、加奈ちゃん。」
「・・・はい、かしこまりました。」
これから美咲に説明をするのだろう。そう悟った加奈は夕飯を作りに食堂へ向かう。
「・・・留美様?」
「ふふっ・・・あなたが「様」だなんて・・・よっぽど加奈ちゃんに教育されたのね・・・」
「・・・あの・・・」
「ええ、分かっているわ。 ・・・ほら、これよ。」
と言って胸をはだけさせる留美。
「!!! こ、これは・・・」
「ええ、母乳。おっぱいよ。 私と加奈ちゃんはおっぱいがでるわ。」
「か、加奈様もですか・・・?」
「ええ。私たちはコタちゃんに・・・してもらったから・・・」
「な、何をですか・・・?」
ゴクリと生唾を飲んで話しに食らいつく美咲。
「ふふふっ・・・あなたの想像してることだと思うわ・・・」
「!!! って、ことは・・・!!」
「ええ。たった今も・・・とっても気持ち良かったわぁ・・・♪」
「・・・る、留美様!!」
「なに?羨ましいの?」
「うっ・・・そ、そんなことは・・・」
図星だったのか、顔をそむける美咲。
「ふふっ・・・あなた次第ではもしかしたらコタちゃんが誘ってくれるかもね・・・」
「!!! 本当ですか?!」
「さぁ?それはコタちゃん次第ね・・・」
「そ、そうですか・・・それで、なんで母乳が?」
まだ疑問が解決していない美咲は留美に再度質問する。
「ああ、これ?出るようになったのよ♪コタちゃんのおかげでね♪」
「そ、それって・・・」
「ええ。」
そういうと留美は美咲の耳元に近寄り
「・・・あなたも出るようになるかもね・・・」
と言って
「さあ、あなたも食堂にいって加奈ちゃんのお手伝いをしてきなさい。あんまり加奈ちゃんを待たせると加奈ちゃん怒っちゃうかもよ?」
もうこの話はおしまい。といった感じで美咲を食堂に促す。
「・・・は、はい。かしこまりました・・・」
美咲も渋々ながら食堂に向かうことにした・・・
「加奈ちゃん、夕食の準備は出来たかしら?」
狐太郎を抱っこしたまま食堂に入る留美。二人とも新たな服に着替えている。
「あ、留美様にご主人様。食事の方は出来ていますわ。今、お持ちいたしますね。」
そう言うと食事をもってくる加奈。その後ろには同様に食事をもってきている美咲がいる。
しかしここで一つ問題がある。それは「狐太郎は寝ていたため、美咲がメイドとして屋敷に住むことになったことを知らない」ということである。
その結果
「あ、あれ?あなたは・・・」
どうしてここに居るのかが分からないといった風に首をかしげる狐太郎。
美咲の方はあらかじめ言われていたのであろうか、自分から話を切り出した。
「は、はい・・・私は美咲・・・藤宮美咲といいます。狐太郎様、どうかわたしをここに住まわせて頂けないでしょうか・・・?」
そう許しを請う美咲。ここで狐太郎が拒否すれば美咲はこの屋敷に住むことは出来ないであろう。
「ふぇ?・・・お、お姉ちゃん?」
どうすればいいのか分からず姉を見上げる狐太郎。
「コタちゃん・・・コタちゃんはどう思うの?美咲ちゃんはここに居ても良い?」
あくまで狐太郎の意見を聞こうとする留美。美咲としてはこのあとの一言で自分の運命が決まるとあって、緊張した面もちだ。
「・・・う〜ん・・・」
「こ、狐太郎様ぁ・・・」
不安からか眼元がうるんできた美咲。しかしその不安はぬぐい去られることとなる。
「・・・いいよ。」
「へ?」
「僕、最初は怖かったけど・・・今はそんなこと思わないよ。だから、良いよ?」
「あ、ああ・・・!!! ありがとうございますぅ!!」
不安が無くなった美咲は別の意味で涙を流し、頭を深々と下げていた。
「それで・・・僕はあなたのことをなんて呼んだらいいの?」
いきなり呼び捨ては失礼だろう。と思っていたが
「はい、私のことはどうか『美咲』とお呼びください・・・狐太郎様・・・」
「え、いいの?呼び捨てで・・・」
「かまいません。むしろ、そう呼んでくださいませ・・・屋敷でも、学校でも・・・」
「うん、わかったよ。美咲。」
「!!!! はぁ〜!!嬉しいです!!」
呼び捨てで呼ばれたことがよっぽど嬉しかったのか身悶える美咲。普段の厳格な彼女からは全く想像できない姿だ。
「これからよろしくお願いします!狐太郎様!!」
そういって握手をしようと手を差し出す美咲。
しかし狐太郎はその行動にビクッと肩を震わせ、留美に抱きついた。
美咲は唖然としている。自分はまた何か狐太郎に嫌な思いをさせてしまったのだろうか・・・
その時、加奈が美咲に近づき、耳元で
「大丈夫ですよ。いいですか?ご主人様が触れるまで絶対に動かないでください。ずっと笑顔でご主人様のことを見つめていてください・・・」
と囁いた。その後、加奈は留美に目配せをする。