先祖がえり 180
「〜〜〜♪ こーくぅん♪」
屋敷の案内、メイド服の着方の講習、初顔合わせなどを済ませたその日の夜。
明日香は屋敷の中を歩き回っていた。
「・・・っとと。いけない。『狐太郎様』だったわね。」
明日香は急に立ち止まり確認する。
「えっと・・・留美様、加奈様、美咲様、真由様・・・」
自分の上司になる人物を指折り数えていく。
「・・・うん。何とかなりそう。でも、言葉づかいには気をつけないとね。」
そう言うと明日香は自分の頬をモニュモニュと揉みこむ。
そして
「・・・〜〜〜〜♪ 狐太郎様〜♪」
鼻歌を歌いながら屋敷を歩き回って行った。
その途中
「〜〜〜♪・・・あれ?」
留美の部屋の前で立ち止まる明日香。
何やら話声が聞こえる・・・電話だろうか。
よく見ると扉が少し開いていた。
「・・・・・何かしら・・・」
明日香は好奇心のままに部屋の中を覗きこんだ。
「・・・はい・・・明日の夕方に届く・・・はい・・・」
部屋の中では留美が電話をかけていた。
(・・・? 上手く聞き取れないけど・・・明日届く?荷物かしら・・・)
明日香は出来るだけ聞こえやすいように耳を澄ませる。
「・・・はい・・・飲んだら・・・コタちゃんと・・・はい・・・胸がいつもより・・・大きく・・・」
(!! 今「胸が大きく」って?!)
興味をそそる話に明日香は聞き洩らさないよう注意する。
その時
「・・・明日香さん?」
「はいぃぃ?!?!」
いきなり後ろから声をかけられ驚く明日香。
振り向くとそこには
「か、加奈様?!」
不思議そうにこちらを覗きこんでいる加奈が立っていた。
さらに
「・・・どうしたの?」
扉が開いたかと思うと留美が顔を覗かせる。
電話は保留にしてあるようだ。
「あ、留美様。いえ、留美様のへやの扉の前で明日香さんが屈みこんでいるのを見たので・・・」
「明日香ちゃん? どうしたの?何か用?」
明日香はとっさに
「い、いえ!!少し足元が痒くなりまして!!」
嘘をついて難を逃れようとする。
「・・・そう。夜も遅いわ。加奈ちゃん、明日香ちゃんをお部屋に連れていってあげて。私も電話が終わったらコタちゃんの部屋に向かうから。」
「はい。かしこまりました。さぁ、明日香さん。こちらへ。」
何とかバレずに済んだ明日香。
(・・・明日届く荷物の中身を飲んだら、胸が大きくなるってことかしら?)
明日香は盗み聞きした話を頭の中で反芻していた。
「・・・ああ、お爺様。ごめんなさい。」
『どうした?何かあったのか?』
明日香を部屋に送らせた留美は、電話を続ける。
「いえ、今日新しく来たメイドの子が迷ったらしくて。」
『そうか。それでだ、確かにその薬を飲んで狐太郎と事に至ればいつもより胸が大きくなる。』
「ええ。胸を大きくする効果のところだけを強めるんですよね?」
『そうだ。だが、問題が二つあってな。』
「問題?」
『ああ。まず一つ目は効果が強いということだ。一応それなりの量を送るが、付属のカップで量を測って飲め。じゃないと効きすぎてしまう。』
「・・・わかりました。それで・・・」
二つ目の問題とはなんだろうか。
『・・・二つ目はちょっと厄介でな・・・催淫効果があるんだ。』
「・・・催淫効果・・・ですか?」
『ああ。飲むと身体が火照って、狐太郎を求めるようになる。まぁこれも量さえ守ればたいしたことは無い。』
「そうですか・・・それで、どのくらい飲めばどのくらい効くんですか?」
目標は加奈や里美を超す160cmぐらいだ。大体の目安が欲しい。