先祖がえり 148
『だが、あいつは少し傲慢で、さらに野心家でな。何事にも頂点であろうとする。』
「・・・・・」
留美は里美の「頂点に立つため」というセリフを思い出していた。
『・・・もし、あやつほどの逸材を、狐太郎、ひいてはお前のもとで自由に手なずけるとしたら・・・どうだ?』
「そ、それは・・・」
もしもそうだとしたら、よっぽど心強いことだろう。
『・・・そこで、あやつに罠をかけたのだ。』
「・・・罠?」
『ああ・・・もしお前が私の言いつけを守っているなら狐太郎は無事なのだろう?』
「え、ええ・・・」
もしかして、この人はこうなることを見越して「狐太郎を安静にさせろ」などという指示を出したのか。
『・・・私があやつに人狐の力についてわざと口を滑らせた。するとどうだ、野心家な里美のこと、面白いように食いついた。』
「・・・・・」
『あやつは思惑通り人狐の力を手に入れようとした。しかし、そこにこそ罠があった。』
「・・・それは?」
『・・・本来人狐の力は人狐にしか扱えぬ。それを無理やり奪おうものなら・・・』
「・・・どうなるんです?」
『・・・そいつは生涯、相手の人狐に絶対の忠誠を誓うことになる。』
「なっ!!」
もしそれが本当なら・・・
『試しに狐太郎が目を覚ましたら里美のもとへ連れて行ってみろ。ああ、その際気をつけることがある。』
「・・・なんでしょう。」
『いいか?あやつにとって今絶対的な忠誠を誓っているのは狐太郎だけだ。お前を始め、他の人間の事は見下している。』
「・・・はい。」
なんだろう。ものすごくイラッとする。
源之助にもそれが伝わったのか
『・・・だが、狐太郎の口から「こいつはお前より上の立場の人間だ」と言ってみろ。やつにとってそれこそが従うべき真実になる。』
「あ、なるほど。」
これは良いことを聞いた。
と、丁度その時
「・・・ん、んん・・・」
「あ!!留美様、ご主人様が!!」
狐太郎が目を覚ましたようだ。
「ええ! お爺様、コタちゃんが目を覚ましたので・・・」
『おお、そうか。なら・・・あ、そうそう。ついでに「源之助にも従うべき」とやつに言っといてくれ。最近生意気でな。』
「あら・・・ふふふっ。分かりました。それでは。」
そう言って電話を切る留美。
そしてそのまま加奈達の方を振り返ると
「・・・聞いたかしら?」
「ええ。全て聞かせていただきました。」
彼女たちの復讐が始まった。
「・・・コタちゃん、大丈夫?」
目を覚ました狐太郎のもとへ駆け寄る留美。
「・・・んん〜・・・?お姉・・・ちゃん?」
どうやら意識は戻ったらしい。
「ああぁ・・・良かった・・・」
留美達はそのまましばらく狐太郎の面倒を見る。
その間に留美は狐太郎に読ませるセリフを紙に書いていた。
さらに
「あのね、コタちゃん・・・」
何やら狐太郎に吹き込む留美。
そして準備が終わると
「・・・行くわよ。」