先祖がえり 112
(・・・もしかして・・・昨日・・・)
留美の中にも心当たりがあった。奇しくもそれは狐太郎の心当たりと同じであった。
(・・・私の中のコタちゃんは優しくて、可愛くて、私のことを好きでいてくれて・・・)
留美は自分の中の狐太郎の姿を思い出す。
(・・・でも、コタちゃんが暴走した時から、コタちゃんは力を使えるようになって・・・昨日は暴走してなくても・・・)
が、昨日の姿と今までの姿は異なるものであった。
(・・・私、それでコタちゃんのこと・・・)
もしかしたら自分の中の狐太郎がどんどん変わっていく事が怖いのだろうか・・・
いや、ひょっとするとその「力」そのものが怖いと思っているのだろうか・・・
考えられる範囲での原因をつきとめる留美。
だが
(・・・だけど、それってコタちゃんを傷つけちゃうことだわ・・・私がコタちゃんを信じてあげなくてどうするのよ・・・)
自分がそう思うこと自体がいけないことだ。そう思ってはいるのだが、トラウマのようになってしまった今ではどうしようもない。
(・・・とにかく、コタちゃんに余計な心配をかけないようにしないと・・・これ以上コタちゃんに嫌な思いはさせられないわ・・・)
2度目の暴走の時、自分が狐太郎にしてしまった過ちを思い出しながら決意する留美。
そして留美はそのまま目を閉じて眠ることにした。
だが、その決意をするのは少し遅すぎた・・・
「・・・・・よしっ」
狐太郎は眠ってなどいなかった。それどころか自分を挟むようにしている二人が眠っていることを確認すると
「・・・お姉ちゃん・・・ごめんね・・・僕のせいだね・・・」
再び悲しそうな顔を浮かべ、二人に気づかれないようベットから出る。
「・・・僕、これ以上お姉ちゃんに怖い思い・・・させたくないから・・・」
狐太郎はそのまま部屋の扉に向かうと
「・・・ごめんなさい・・・」
頭を下げて部屋を後にした。
「いやああああああああ!!!」
加奈は近くから聞こえてきた大声で目を覚ました。
「きゃっ!! ど、どうなさったのですか?!留美様?!」
慌てた様子の留美を見た加奈は何があったのか確認する。
「・・・い、いないの・・・」
「へっ?」
「コタちゃん・・・コタちゃんがいないのぉ!!」
「ええっ?!」
加奈は留美の言葉に辺りを見回すが、確かにそこに狐太郎の姿は無い。
すると
「ど、どどどどうしましょう!!」
加奈は留美よりも慌てだす。自分の愛する主人が忽然と姿を消したのだからもっともだ。
「そ、そうです!!もしかしたら喉が乾いて食堂に行ったのでは?!」
加奈は慌てながら留美に話しかける。
だが
「喉が渇いた時は私達のおっぱいを飲むはずだわ・・・」
「あう・・・それもそうですね・・・」
加奈は逆に自分の意見の穴を見つけられてしまった。
「で、ではっ、用を足しに行かれたのでは?!」
別の意見を発する加奈。
しかし
「・・・コタちゃんはどこに行くにしても抱っこで移動してたわ・・・コタちゃんが屋敷のお部屋の位置を知っているとは思えないわ・・・」
「うう・・・確かに・・・」
またしても穴を見つけられてしまう。
この会話でますます不安になったのか
「ああっ・・・コタちゃん・・・どこに行っちゃったの・・・」
心配のあまり涙すら浮かべる留美。
「・・・そうです!留美様、源之助様に相談しては・・・」
加奈は閃いたとばかりに留美に提案する。
「・・・そうね。そうしましょう。」
加奈の提案を受け入れた留美は源之助に助けを求めることにした。