欲望の果てに何を見る 2
何となく想像はつく。世間的にはあまり良いとは言い難い関係だったのだろう。しかし、互いに独り身であるなら憤る必要もない。
「失礼ですが、島村さんは独身ですか?」
「え?あ、はい」
「なら、問題はないでしょう。男と女が惹かれ合うのは自然なことです」
和子の表情が少し和らいだ。
「島村さんと僕とは似ていますね。互いに大切なものを失った………でも僕はこうしてまた動き出しています。島村さんも父に捕らわれすぎず、あなたがしたいように生きてください」
広げた手紙を折り畳もうとした時、ふと意味の分からない一文が目に入った。
「ははは、父はかなり焦っていたのでしょうか、文章の意味が分からないことを書いている。オヤジにしては珍しい」
「何と書いてあるんですか?」
「いやぁ、この最後のところ、『悠の身の回りの面倒をして、たくさん可愛がってもらいなさい』と」
畳みかけた手紙を開き直し、和子の方へ向ける。
「まぁ、僕は大丈夫ですので今日はお引き取りください。もう会うことは……」
「それは、間違いではありません」
和子が俺の言葉を遮った。
「私は悠さんに可愛がってほしくて、あなたを訪ねたのです」
気のせいか、和子の顔が紅潮しているようだ。
「と…言いますと?」
「私はあなたに飼われるため一週間前に退社し、それからずっとあなたを探していたのです」
和子は鞄から真紅の首輪と鎖製のリード、「和子」と書かれた犬用の餌皿を取り出した。
「は?え?え…?」
困惑する俺をよそに、和子はスルリスルリと服を脱ぎ捨て、全裸になると、自分で首輪を巻き、リードを付けた。
そして四つん這いになると、リードの反対側を口にくわえて机の上に乗り、差し出すように顎を突き出す。
「…………」
訳の分からないこの状況、悠は対応に困った。
恥ずかしそうに下から見上げるぱっちりした瞳、焦れったそうに左右に揺れている肉付きのイイお尻、重力に反発して形を保っている大きめの胸。
どれをとっても性欲を掻き立てる。
「オヤジは………」
オヤジはこの女にどんな調教を施したのだろうか…。そんな興味を知らない間に持っていた。
そして、オヤジの色から俺色に染め替える楽しみが背中を押す。