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淫蕩王伝
官能リレー小説 - ハーレム

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淫蕩王伝 92

 彼女にすればリュウジュとのことなど火遊びに過ぎないのだろう。その証拠に一度も振り返らない。
 試合にまけた自分はチャンスを失った。後はディアナ姫への狼藉で処刑されるのだろうか? 一体どうしてこんなことになったのだろうか? 異界に飛ばされて今日までの日々、剣の強さに酔いしれ放蕩の限りを尽くしてきた。その慢心がこの結果を招いたのかもしれない。
 彼の胸には後悔が犇き、近づいてくる枷を持った兵士達の足音にも身動き一つできなかった。
 その時だった。
 影が動いた。
 雲とは逆のほうへ動く影。鳥のように翼を持つそれは徐々に大きくなり、そして空気を切り裂く音とともにリュウジュの傍で砂煙を上げる。
「な、なんだ!」
「あれは!」
 突然のことに驚く観客達。衛兵達は武器を取り、身構える。
「久しぶりだなぁ……龍樹……」
 親しげに話しかける砂煙の人影。それは昔どこかで聞いたことのある声だった。
「え?」
「なんだ、なにごとだ!」
 武器を構える衛兵達は砂煙の人影に槍を向ける。しかし、ヒュンと砂塵が切り裂かれたとき、先頭の兵士の首が飛んだ。
「うわ、なんだ! こいつは! 捕らえろ!」
 兵士達は一人が殺されたことにそれが敵意を持ったものだと知り、槍を突き立てる。
「うっさいな……。今取り込み中なんで後にしてよ」
 子供っぽい言い方をする人影は、再びヒュンと何かを走らせ、彼らを取り囲む衛兵達の首を刎ねる。
 突然のことに観客達は言葉を発せず、砂煙が晴れるのを待つ。
 そして一陣の風がそれを振り払ったとき、その場にいた異形の者に声を上げる。
「ま、魔族だ!」
 土気色の男、というよりはまだ小柄なそいつは背中に大きな翼を持ち、フィルガイアでは見ない青いズボンと、白い靴を履いていた。上半身は翼のせいで裸であり、小柄ながらに筋肉のついた姿を見せる。手にはグローブをはめており、銀色の輝きが見える。
「魔族だって? なんで僕のことを助けた?」
 魔族は人間にとって敵である。何も無しに手を貸すはずもなく、ましてや窮地を救うなどありえないことだ。
「魔族っていっても半分だけどな。まあ、なんだ、友のピンチに駆けつけるってのは、お約束ってもんだろ?」
「友? 誰……?」
 涙に砂が混じり、それを拭う。おぼろげながら見える魔族の男のシルエットにリュウジュは見覚えがない。

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