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淫蕩王伝
官能リレー小説 - ハーレム

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淫蕩王伝 91

 そして試合開始の合図であるドラが打たれる。
 リュウジュは大柄な剣を構えるが、不自由な姿勢でいたことと空腹でその重みに耐えられない。対し、エリーは悠然と細身の剣を抜くと、一歩一歩と距離を詰める。
「く……」
 威嚇のつもりで剣先を向けるリュウジュだが、剣の重さに足腰が立たず、へっぴり腰になってしまう。
「ふん……。ムキになる私もまだまだ青いか。恥ずべきことだな」
 自嘲気味のため息をつき、彼女は眼を伏せる。
「くっ!」
 今こそ勝機と睨んだリュウジュは重い剣を振りかぶる。
「せこい。実にせこい……」
 眼をつぶったままその一撃をかわすエリー。彼女は寸前までのリュウジュの体勢から、続く一撃の流れを予想していた。そして、ふらつく足元につま先を掛けると、リュウジュは無様に転ぶ。
『おおっと……!? え、まじで……?』
 進行はそのあっけないダウンに声が出ない。
『失礼……進行としてあるまじき沈黙、許してくれ。いや、でも、まじで……? ここまで? 異界の光を名乗るんなら、もっと腕が立たないと……。俺も何も言えないんだけど、もうちょい見せ場ないの?』
 絶不調なこともあるが、種大を持たぬ彼はただの中学二年生。剣の強さや不思議な力に守られてきての戦闘経験など、命のやり取りを潜り抜けてきた女剣士を前にはぬるま湯の中のお遊びに過ぎない。
「ふぅ、せめて観客を楽しませたいのだが?」
 エリーは立ち上がろうとする彼の首筋に切っ先を触れさせ、そっと引く。
「う、うわぁ、うわあ!」
 冷たい刃の感覚、そして首筋から滴る水の肌触りに、リュウジュは怯えた。
 漠然と沸いた死の恐怖が彼を襲う。人離れした不思議な力に守られ、他人、他の種族の命を軽々しく奪うことはできても、いざ自分がそれをされる側となれば、その覚悟はない。
「安心しろ。それだけ見苦しい様を見せてくれたらディアナ様もお前を真の意味で哀れんでくれるだろう。ふん、しかし、本当につまらんな……。ま、これからは異界の光など名乗らぬことだ」
 エリーは剣を納めると、観衆に向かって手を振り、自分の勝利とつまらぬ試合の終わりを告げる。
『あ、えーと、うえ? ああはいはい! さっすが俺の女神様! 異界の光を名乗る無作法者に慈悲をかけるなんて! エリー様、ばんざーい! ばんざーい!』
 いろいろ用意していたいくつかの台詞も全て台無しにおわった進行は、てぶりみぶりで強引に纏め上げる。
 エリーは這い蹲る敗者に目もくれずに元来た道を戻る。
 残されたリュウジュは悔しさと情けなさから涙を零す。そのおぼろげな視界の端ではディアナ姫と思しき女性が侍女に付き添われ、退席するのが見えた。

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