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淫蕩王伝
官能リレー小説 - ハーレム

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淫蕩王伝 88

「ソフィー様、危ないので振り回さないでください……」
 リュウジュを捕縛するつもりが逆に宥められる彼女に、エリーは額に手を当てる。
「あ、あのエリー、これはどういうこと?」
「どういうこともなにもありません。聞けばメイドがこやつに買収され、ディアナ様の飲み物に媚薬を入れていたというではありませんか! ディアナ様の寛大なお心に付け入り、媚薬にて篭絡しようなどと……」
 エリーが悔しそうに歯噛みする頃にはリュウジュも衛兵達に床にねじ伏せられて首枷に手枷をはめられていた。
「それは私が指示したことで……」
「そして旅の同行のものを見れば、売女に素性の知れぬ賞金稼ぎ、人外ばかり。今しばらく入国に関する調査をやり直す必要がございます。それではこれにて失礼します」
 エリーは早口で捲くし立て、ディアナの言葉を遮ったまま衛兵達を連れ立っていく。
「お、お待ちなさい! 私のいうことが聞けないのですか!? リュウジュ様をどうなさるおつもりなの?」
 乱入から数分の出来事に呆気に取られていたディアナだが、簀巻きにされて引きずられるリュウジュの姿にようやく声を荒げる。
「申し訳ありません。ディアナ様のお父上からの命令です。なにとぞご理解を……」
「お父様の……」
 たとえ姫とはいえ、その権力は絶対ではない。あくまでも父親の権威の下でそれを奮うに過ぎず、その父からの命令を前にディアナの命令が優先されるはずもない。
 しばしの喧騒を終えた一室では、ディアナが残されていた。

 ヴィルネ大公告、地下の牢獄に手枷、足枷、首枷を掛けられてころがされたリュウジュ。
 一日の食事は鉄格子の前に置かれるパンのみ。それは手枷が邪魔をして掴むことができず、見回りの兵士のつま先で遠くへと蹴飛ばされる。仕方なく部屋の隅に生えた苦いきのこで空腹を誤魔化す。飲み水は天井を滴る水滴を口で受け止める程度で、水分補給に過ごす必要があった。
 ――いったいどうなるんだろう。もしかしてこのまま飢え死にするまでこのままなのか?
 暗い中、時計もなく時間の概念が非常に長く感じられていた。
 仲間達はどうなったのだろうか?
 ライア、ミーシャ、アナシア、サラ、ヴァレリア……。

 彼女らのこともさることながら、自分はこれから……。
 せめて死ぬ前にもう一度彼女らを抱きたいと思うも、栄養状態の悪い彼は、彼女らの裸を妄想するも勃起することができなかった。
「敬礼!」
 そんなおり、見張りの兵士の畏まった声が聞こえた。そして階段を降りる数人の足音。それはリュウジュの牢屋の前で止まった。
「あの……うわっ!」
 リュウジュが顔を上げると水が浴びせかけられた。それも一度ではなく、二度三度と続けざまに。
「やめ、げほ、やめてください! うわ、げふげふ……」
 喉の渇きはあるが、浴びせかけられるというよりも水の塊をぶつけられるという言い方がよく似合い、痛みと鼻に入って咽るせいで口で受け止めることができない。
「やめ……」
 女の声がそれを止めさせる。リュウジュは犬のようにぶるぶると身震いして滴る水を飛ばす。
「リュウジュと言ったな。貴様の処遇が決定した。覚悟して聞くがよい」
 冷たい声にはっとするリュウジュ。水をぶちまけられ、自由を奪われたまま告げられる決定。処刑という言葉が脳裏を過ぎる。
「ディアナ姫への狼藉、および検問で女の裸をさらすなどと不埒な行為。これだけのことをして即刻打ち首とならぬのは、全てディアナ様の優しさ故。ありがたく思え、この下種め」
 ディアナの前で男性器を露出したのは事実だが、それはディアナがお茶に混ぜた媚薬がきっかけだ。そして検問での行為は向こうの兵士がさせたこと。
 明らかな濡れ衣にも関わらず、それが彼にのしかかることに、リュウジュは悔しさを噛み締めた。
「男性器を切り落とし、市中引き回しを処する。それが貴様への罰だ……」
 芋虫のように床に這いつくばるリュウジュは、愕然とした。
 女はその表情に満足そうに嗤うと、鉄格子に顔を近づける。その整った顔つきはエリーであった。

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