淫蕩王伝 69
「久々のフカフカベッド〜」
部屋に入るなり、疲れて旅慣れないリュウジュはベッドの上にダイブして寝そべる。
「リュウジュさん、お行儀悪いですよ」
アナシアはそんなリュウジュをたしなめる。
「だったらね、ほいっ!」
ぽふっ!
「きゃっ!」
リュウジュはいたずらっぽく笑うと、アナシアの手を引いてベッドへと引っ張り込んだ。
「いっしょだね。」
人懐っこい笑顔を浮かべてそう言うリュウジュ。
「も〜う!リュウジュさんったら・・・。」
次の瞬間、アナシアは我が身に起こった事が理解出来なかった。
リュウジュの顔が急に目の前に近付いたかと思うと、唇が温かく湿った物に覆われたのだ。
それがリュウジュの唇であるという事に気付くまでに少し時間がかかった。
ぬちゅ・・・くちゅ・・・・
リュウジュの舌がアナシアの唇を割り、彼女の口内へと侵入して来た。
そこは今まで誰にも侵された事の無い彼女の“聖域”だった。
その“聖域”にリュウジュの舌が無遠慮に入り込んで来て“蹂躙”しているのだ。
「……っ!?」
アナシアはこの突然の事態に抵抗するのも忘れて、ただリュウジュのなすがままになっている。
あまりの事に思考が停止してしまっているのだ。
やがてリュウジュは唇を離した。
二人の唇の間に透明な糸が伸び、切れた。
「エヘヘ♪初めてアナシアさんにキスしちゃった…驚かせてゴメンね?」
そう言ってイタズラっぽく笑うリュウジュ。
アナシアは呆けたような顔で彼を見つめていたが、ハッと気付いたように我に返った。
次の瞬間、リュウジュは驚きに目を見張った。
目の前のアナシアの顔が見る間に真っ赤に染まっていき、瞳から大粒の涙がポロポロと溢れ出して来たのだ。
「…え!?ア…アナシアさん?」
「…リュウジュさんの……ばか…!」
アナシアはそう言うと手で顔を覆い、リュウジュを突き飛ばして部屋を出て行ってしまった。
「……」
リュウジュは訳も分からず呆然としていた。
頭の中を無数の?マークが飛び交っている。
「あ〜あ、やっちまったねぇ…」
ライアがポリポリと頭を掻きながら溜め息混じりに言った。
「……どゆこと……?」
リュウジュは目を点にしてライアに尋ねる。
「リュウジュ…何でアナシアにキスなんてしたんだい…?」
「…まずかったかな…?」
「まずいも何も…神官ってのは基本的に処女・童貞なんだよ?異性の体に触れられる事すらあってはならないんだ。まさか知らなかった訳でも無いだろう?」
「……」
知らなかった。
ライアは続けた。
「まぁ、そんなのは“お題目”で実際は信者の目の届かない所ではヤリまくってるんだけどね…。特に聖都の神官連中なんざかなり乱れてるって噂だよ。でもアイツはたぶん、あの性格からして…」
「…じゃあ…」
リュウジュはようやく絞り出すように言った。
「…僕は…無理矢理アナシアさんのファーストキスを奪っちゃったって事…?」
「…まぁ、そういう事だ…」
気まずそうに苦笑いしながら言うライア。