淫蕩王伝 43
目眩ましの呪文である(これは強い光を発するだけの単純な魔法だ)。
ところが、治療で魔力の大半を使い果たしてしまったのか、大した光が出なかった。
盗賊達はアナシアに襲いかかり、あっと言う間に取り押さえてしまった。
「オラァ!このクソ尼ぁ!!大人しくしやがれ!!」
「キャアァーッ!!!リュウジュさぁーん!!」
「ケケケ…兄貴、コイツなかなか良い体してますぜ」
アナシアを捕まえた盗賊の一人は、ニヤニヤ笑いながら彼女の豊かな胸を鷲掴みにした。
「ヒイィ〜!!?や…止めてぇ!!!」
これまで他人(特に大人の男)に身体を触られた事の無かったアナシアはゾクゾクと背中に妙な感覚が走った。
「確かにこの乳…尼にしとくには勿体ねえ体だよなぁ」
「兄貴、こいつここで犯しちゃいやしょう!」
「ヒィ…ッ!!!?」
“犯す”という言葉を聞いたアナシアは恐怖で身をこわばらせた。
「バカヤロウ!さっさとお頭の元に戻らねえと後でどやされるぞ」
「ちぇ…仕方ねぇ。そう言うわけだ尼さん。大人しく来てもらうぜ」
「ム…ムゥ!!!ム〜!!!?」
盗賊達はアナシアの口を押さえて体を抱え上げると頭の元へと急いだ。
「ふぅ…」
リュウジュとライアは各々の武器を地面に突き立てて一息ついた。
「まだ死にたい奴はいるかい!?」
ライアが言った。
周囲には10人ぐらいの盗賊達が無残な屍となって転がっている。
残った盗賊達は遠巻きに二人を見ているだけだ。
「おい!小僧だけじゃなく、あの女もメチャクチャ強えじゃねえか!?」
「待てよ?あの巨大な斧に褐色の肌…まさかアイツは…」
盗賊の一人がライアを見て何かに気付いた。
「何だ、知ってるのか、お前!?」
「ああ…ライアだよ!巨大な戦斧を振り回し、次々と敵をなぎ倒していく様から“鋼鉄の嵐”と呼ばれた女戦士ライアに違ぇ無え!!」
「あのライア!?マジかよ!?聞いてねえぞ!何でそんなのがこんなシケた村に居たんだよ…!?」
盗賊は悲鳴に似た声で叫んだ。
「何だ…ライアさん、通り名なんか持ってたの?」
「まあね…“鋼鉄の嵐のライア”って言えば、この辺りじゃあちったぁ名の通った戦士さ!」
ライアはニヤリと笑ってリュウジュに言った。