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淫蕩王伝
官能リレー小説 - ハーレム

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淫蕩王伝 103

 ――大丈夫、まだまだ死んでない。うん。よし、今度は俺も行くぞ!
 痛みは心の痛みだろうか。彼女がこのまま打ちひしがれていたら、あるいは……。
 そんな皮算用をしていた邪な気持ち。無いと言えば嘘になる彼女へ付け入りたい下心。
 紅音を元気付けるつもりが、いつの間にか自分の心のモヤを晴らしてくれたことに、守は逆に勇気付けられた。
 その後は小一時間ほど練習に励み、汗だくなまま帰った。
 その時に流した汗は忘れたくない。そんな気持ちがあった。
 そして、もう一度失恋をした。
 けれど晴れやかな気持ちだった。
 未練を断ち切り、後輩の指導、そして自分の修養に励む。そう決意した。

 それが揺らいだのは、紅音からの誘い。
 土曜の午前中に、師範から用事を言い渡されたから一緒に来て欲しいといわれた。
 どうせ剣道のことだろうと思った守は、午後にまた練習をするのだからと、道着のまま待ち合わせの場所に向かった。
 するとそこにはファッション雑誌を参考にしたような、どこにでもありふれた可愛い子がいた。
 それが紅音だとわかったとき、彼女は「変ですか」と恥ずかしそうに言っていた。そして、天にも昇るような嘘の告白をしてくれた。

 ――師範に言われた用事はない。守先輩と一緒に居たくなって、嘘を付いた。少し一緒に居たい。いいですか?
 二つ返事で頷くも、自分の格好を顧みると申し訳ない気持ちになる。けれど、大した服も無く、野暮ったい顔な自分には、道着をきている方が三割り増し男前に見えると考え直す。
 紅音は彼の手を取り、映画館へと誘った。その後はゲームセンターやブティックへ行き、ファーストフード店でおやつを食べた。
 ドーナツのチョコが頬についたとき、紅音はそれを指でとり、頬張った。そして慌てて恥ずかしがり、「内緒ですからね」と可愛らしく怒った。
 その様子が今も忘れられない。

 時間はあっという間に過ぎ、外は暗くなり始めていた。
 時計を見ればもうすぐ練習時間。二人の楽しい時間は終わり。先輩後輩に戻る。
 そのつもりだった。

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