階級社会 2
「もちろんです。生死どころか、行動に限らず心まで自由に操れます」
なにそれ素敵。俺の命令は人間リモコンってことですか?
「じゃあさ、もし俺が先生に『俺のことを好きになれ』って命令したら?」
「それは……二級市民である私は、貴方に恋をしてしまうでしょうね」
照れたのか、ちょっぴり頬を赤らめながら質問に答えてくれる先生。
ヤバいぜ。その表情、俺の胸にキュンときた。
「まっまあ、落ち着いてよ。所で先生たち二級市民はどんな地位なんだい」
俺は場をごまかす為に二級市民がなんなのかたずねた。
「ニュアンスに違いはありますが、あなた様の時代ですと"一般市民"が適切な表現でしょう。労働の義務は課せられていますが、それなりの自由も認められています」
「ふーん、なるほどね。そう言えば、先生の名前聞いてもいいかな?」
聞くと女医さんは微笑んで答える。
「特級市民の方が"いいかな"などという必要はありません。私はリコと申します」
その表情もまたツボだった。
見れば年こそ俺よりも上だが、クールな雰囲気と同時に女の子らしさも兼ね備えた女性だ。
俺はたまらなくなってくる。コールドスリープから目覚めたことで、性欲も蘇ってきたのだろうか?
というかいい加減、『命令』ってのを試してみたくなってきた。
丁度目の前には実験体になりそうなべっぴんさんがいることだし。
ニヤリと邪悪に笑ってみる俺。
「どうかしたんですか?」
ものは試し。もとい、ものを試してみたくなった。
「先生、いきなりだけど命令だ!俺のことを好きになってみてくれ!」
「…………!」
命令した途端、瞬間湯沸かし機のように先生の顔が真っ赤になった。
怜悧な表情が崩れ、俺の顔が真っ直ぐ見れないのかモジモジし始める。
「ひ、ひどいです。こんな、私、初恋もまだだったのに」