勾玉キッス☆ 97
この銃弾があんたに当たれば、肉ごとごっそり持って行かれ、骨も筋肉もぐちゃぐちゃ。ご自慢の身体は一瞬にしてカラスとウジ虫の餌に早変わり。
どう? 試してみる?」
…我ながら、おぞましいことを言う。これじゃまるで、どこぞの殺人課の刑事か悪党だ。
幻姫は迷っているのか、黙っている。
少しの間が空く。
「いいわ。力を使い果たしちゃったし、今日は退いてあげる。傷が癒えたら、また会いましょ」
「全裸で言われてもねぇ」
「ぶっ…馬鹿にしないでくれる? ちゃんと着替えは持ってきてあるわ」
「あんたも怒ると、結構可愛いねぇ。
…そうだ。これからプールの授業があるけど、あんたも一緒に泳がない?」
「さっきまで戦った人間と一緒にプールに入ると思う? それに、勝負水着は持って来てないわ」
「スクール水着ならあるよ。一躍ヒーロー間違いなし」
「絶っ対にいや。私はそんな趣味無いわ」
「なら、とっとと行きな。じゃないと、荷物が童貞少年の夜のオカズにされちゃうぞ」
「私がそんな失敗すると思う?」
幻姫はそう言うと、屋上のフェンスを登り降り、屋上から飛び降りようとした。
「そうだ。貴方にいいことを教えてあげる。
桐生クンはね、女の快楽を味わえば味わうほど、心がどんどん女になっていくの。
そして、五芒星と六芒星が同じ数字で重なるほど女の快楽を味わった時に男を味わうと、桐生クンは身も心ももう一人の桐生クンのものになるわ。
じゃあ、また会いましょ」
「待ちなさい! そこから飛び降りたら…」
人の制止も聞かずに、幻姫は屋上から飛び降りた。
樹木の枝が、次々と派手に折れる音がする。
「痛ったーいっ! 枝引っかけたぁ!」
……丈夫な奴。
幻姫が全裸で森に逃げ込んで行くのが、屋上から見えていた。
「さて、私も早くプールに行くとするか。ミヤビ、まだいる?」
ミヤビの後ろ姿がぼんやりと見える。
私は、制服の内ポケットから、水晶の数珠(じゅず)を取り出した。
「ミヤビ。ちょっとくすぐったいわよ」
私は水晶の数珠を手に持ち、ミヤビの背中目がけてビンタの要領で数珠を叩き込んだ。数珠が、霊体のミヤビの中に入るように。
パンッ、と勢いのある音が響いた。
「痛ったーいっ! 森崎君、何がくすぐったいなのよ! すっごく痛いじゃないの……あれ? 私、どうして?」
ミヤビが再び実体化した自分の手を見つめている。信じられない、と言わんばかりに。
「森崎君、私に一体何をしたの?」
「水晶の数珠をミヤビの体内に入れたわ。しばらくの間、実体化していられるから、その間に傷を癒したら?」