勾玉キッス☆ 94
「ぐぁ!!おぼえてらっしゃい。必ずあたしが、アンタをズタズタにしてあげるわ。
このままでは絶対に済まさない…ぁああ…から。……ああ、お、おやかたさまぁああ!!」
断末魔の悲鳴をあげる幻姫。しばらくするとまるでブロンズ像のように、動かない幻姫が出来上がる。
「これでよし。まったく…手こずらせやがって。お陰でとんだ始末書ものだぜ」
森崎君は石になった幻姫に近づくと、コンコンっと固まった幻姫の表面を叩く。
「もう大丈夫だ。巫女さん、大丈夫か?」
「あ…うん。もう大丈夫…」
何とか立ち上がろうした時、森崎君が手を差し伸べてきた。
柔らかく、しなやかな…女の子の手。私は森崎君の手を握り、立ち上がった
「とんだ災難だったが、巫女さん…おっとミヤビさんだったな。君のお陰だよ」
「そんな…私なんか…」
ほとんど動けなかったし、森崎君が一緒にいたから幻姫に勝てた。
でも一体、彼女は何者なの?わざわざ男装して学校に通っているのは…
それにどうして、あれだけ強力な札を持っているのか。
「あの…森崎君、あなたは…」
私は疑問を森崎君にぶつけようとした。
その時だった。
「ミヤビ!雅章が…雅ちゃんが…」
裕美さんの声。とっさに振り向くと気を失っていた雅章君の目元がわずかに動いているのに気がついた。
よかった。私は胸を撫で下ろすと、急いで彼の元へ向かった。
「うぅっ、あれ……?」
雅章君が目を開けた。まだ意識がぼんやりとしているのか、焦点が定まっていない。
裕美さんが雅章君の名前を何度か呼ぶうち、雅章の意識ははっきりしていったみたい、だけど……
「?!うくっ……」
突然私の身体をひどい倦怠感が襲った。
立っていられなくなり、膝をついて何とか手で身体を支える。
「?!ミヤビ、どうしたの?!」
「大丈夫か、ミヤビ!」
裕美さんと森崎君の声が聞こえる。でも、次第にそれもぼんやりとしてきた。
「だ、大丈夫よ……ちょっと力を使い過ぎたみたい……」
かりそめの身体で尚且つ力を酷使し過ぎた。
そのツケで肉体を維持出来なくなってきているみたいね。
しばらくは霊体に戻って力を回復させなきゃ……
「ごめんなさい、裕美さん。しばらくの間、雅あ……雅さんをお願い……」
「ミヤビ!どういう事?大丈夫?!」
「肉体を維持出来なくなったみたい……しばらくは霊体に戻って力を回復させないと……」
喋っているうちにも、肉体は光を帯びて昇華しようとしていた。
身体が消えゆく中、私は森崎君の方を見た。