勾玉キッス☆ 10
あの時の俺は、高校に入ったばかりだし、卒業したら海外留学って事もあって、従姉である麗華姉ぇのマンションで下宿させてもらっている。
「お、俺、やだよ。麗華姉ぇは、俺が女になった事なんか信じてくれないよ」
「大丈夫。私に任せてよ」
裕美が自信たっぷりに親指を立てる。でもなぁ…
「いや、その、それは…」
「つべこべ言わないの。それに、その格好じゃ襲ってくださいと言っているみたいじゃないの」
「うっ…確かに」
今の俺は、男子の制服を着ているとは言え、胸とお尻が大きくて腰が細い。
つまり女の子の8の字体型が全然隠れていないので、かえってエロくみえる。
しかもノーブラだからシャツの上からでもうっすらと乳首が見えなくもない。
これでは確かに、俺が男だと言っても、相手は信じてくれないだろう。
「でしょ。今から連絡するから、ここで待ってなさい」
そう言って、裕美は廊下に出て行った。俺は少々不安になりながらも見送るしかなかった。
…………
「さてと、麗華さん居るかな…」
廊下に出た私は、スカートの内ポケットから携帯を取り出した。
これは最近買い換えたもので、表面の猫の絵がかわいいお気に入りのものだ。
「…それにしても雅章ったら、すっかり可愛いくなちゃって」
くすりと笑いながら携帯を開く。
ぴっぴっぴ…トルル…
…カチャ。
『はい、如月ですけど』
「あ、麗華さん?私、裕美ですけど、今から学校まで来てくれませんか?」
『あらぁ、裕美ちゃん?こんな時間まで…また雅ちゃんと道場で乱取りしてたのかな?』
雅(みやび)と言うのは、雅章の事。麗華さんは、いつも彼の事をそう呼ぶ。
本人は女の子みたいだって、相当嫌がっているけどね。
「あ、はい。ところで麗華さん。実は…その雅章なんですけど…」
『何なの?…また他の人と喧嘩したとか?』
「い、いえ…その…実は…雅章が女の子になちゃって…」
『……え!?』
「女の子になちゃったんです。すっかり…」
『・・・・』
ストレートに言ったけど、本当に信じてくれるかな。
麗華さんは黙ったままだ。
そんな状態が続いた5分後。
『きゃぁあああーーーーーー感激ィイイ!!』
「きゃぁあ!!」
携帯から聞える甲高い声に、私は思わずそれを投げ出しそうになった。
いきなり大声出さないでくださいよぉ〜