勾玉キッス☆ 11
『まぁ、雅ちゃんが女の子に!?しょうがないわねー。じゃぁ、今から迎えに行くわね』
「信じてくれたんですか?」
何だかよくわからないけど、とにかく上手くいったみたい。
私は思わず、携帯を握りしめた。
『もちろんじゃない。あたしの可愛い従弟なんだもん。あっ、今は女の子だから従妹かしら?』
「あ、ありがとうございます。雅章が喜びますよ」
丁寧に言葉を返す。やっぱ言ってみるもんだね。
『ゴホン。ところで裕美ちゃん、その…女の子になった雅ちゃんって、可愛いの?』
「はい?」
私は素っとん狂な声を上げる。
麗華さん、何でそんな事を聞くんだろう…
『可愛いとか綺麗とか聞いているんだけど、どうなの?』
「あ、は、はい。…凄くかわいくて綺麗になったんです…けど…」
『きゃー本当に?すぐに車を出すわ。校門の前で待っていてね♪』
がちゃりと通話が切れる。携帯を閉じた時、私はふとある種の不安が頭を過ぎっていた。
…麗華さん、何故かテンションが高かったみたいだけど、気のせいかな。
もしかして…私、とんでもない事を言ったんじゃ…
………
裕美に言われ、俺は校門の前で麗華姉ぇを待っていた。
辺りはすっかり暮れて、街灯が点いている。
「なぁ…本当に、麗華姉ぇが来るのか?」
「だ、大丈夫だよ。麗華さん、私の言った事を信じてくれたし…」
裕美のやつ、麗華姉ぇと何かあったのかな。どうもはぐらかされたような…
待っている間、俺は猛烈に恥ずかしかった。
男の制服を着ていたとはいえ、体のラインが強烈に女をアピールしていたらしく、道行く男どもの視線が痛い。恥ずかしながら裕美の影に隠れてしまう。
それがかえって男どもを萌えさせてしまう事を、俺はまだ知らなかったわけだが。
ビー、ビー
と、クラクションが鳴っている。
見れば、俺達の前に一台の車が止まっているではないか。
ワインレッドのプジョー206。型式 GH-T1KFW カスタムタイプ。
女性が乗っても似合う小型車で、麗華姉ぇの愛車だ。
俺は、真っ赤なBMWとか似合うような気がするけど、その辺は良くわからない。
バタンと鈍い音とともにドアが開くと、にゅっと黒のヒールを履いた美脚が伸びる。
麗華姉ぇは、やっほー、と手を振りながら降りてきた。
「あっ、麗華さ〜ん」
「裕美ちゃんお待たせ……でところで雅ちゃんは何処に…」
麗華姉ぇは降りて裕美に挨拶するなり俺を捜すのか周りを見回す。
すると裕美の後ろで隠れる様にいた俺と眼と合った。
「ところで裕美ちゃん、後ろにいる男子制服着た可愛い娘は誰?」
「あの…その…雅章なんですけど…」
暫し数秒の沈黙の後…
「えぇぇぇ!!」
「俺だよ、雅章だよ麗華姉ぇ!」
「本当です麗華さん」
俺と裕美が麗華姉ぇにこれから本格的な説得しようとした途端、とんでもない事を言い始めたのだ。