勾玉キッス☆ 85
森崎君、あなたを信じるわ」
「…そうよね。今はこの闇を払って、雅を助けるのが先よ。私も、森崎くんを信じてる」
「…ありがとう。そう言ってくれると助かる」
私に合わせるかのように、裕美さんは頷き、森崎君は「ありがとう」と言った。
そして森崎君は、右手の人差し指と中指を立てると、呪文のような言葉を唱え始めた。
「[破魔の札]よ。その身に封じられし力もて、邪(よこしま)なる闇を打ち払え」
森崎君は左手に握っていた[破魔の札]を空に放り投げて、叫んだ。
「急急如律令!」
[破魔の札]からまばゆい光が広がっていく。あまりの眩しさに、私は思わず目をつぶった。
「臨! 兵! 闘! 者! 皆! 陣! 列! 在! 前!」
森崎君が九字真言を唱えているのが聞こえる。たぶん、唱えながら手印も組んでいるのだろう。
急に、森崎君の声が聞こえなくなる。
それもほんの数秒だけで、また九字真言が聞こえてきた。
そして再び、森崎君の声が聞こえなくなる。
それも数秒。
そして……
「破!」
森崎君の一際大きな声が聞こえた……
私は恐る恐る目を開けた。
目の前に広がっていたのは、どす黒い闇に覆われた屋上ではなく、太陽の光が降り注いでいる屋上だった。
「……ぁふ…くっ……」
またしても、私は急な目眩に襲われ、その場に蹲った。
異常なまでの体の火照りが止まらない。
それだけではない。胸や下腹部がじくじくと疼き始めていた。
着ている服が服だから、火照りや疼きがこれ以上続けば、乳首の勃起が目立ってしまうだけでなく、シミまで作ってしまうかもしれなかった。
「ミヤビ、本当に大丈夫なの?」
「なんとか大丈夫だから…ぁふぅ…」
「巫女さん。そんな声出しておいて、大丈夫なわけないだろ?」
「森崎君。その、『巫女さん』って呼び方はやめて。私のことは、『ミヤビ』でいいから」
「じゃあ、ミヤビさん。もしかして、桐生さんと感覚を共有しているんじゃないのか?」
「…そうかも…しれない……んぅっ…」
体の火照りと疼きを我慢して、私は何とか立ち上がる。
ジワリ、と湿った感触を味わう。
脱がなくても分かる。着けているふんどしが濡れている。
正直過ぎる体が腹立たしかった。
このまま、我慢していられるかどうか…
「……! いたっ! 雅ぃっ!」
突然、裕美さんが叫ぶ。
私と裕美さん、そして森崎君の視線の先に――
見たことのない女の子と一緒に、雅章君がいた。