勾玉キッス☆ 75
ミヤビの言葉に、私はクスッと笑った。それにつられたのか、ミヤビもクスッと笑った。
私はミヤビとは気が合いそうだな、と思った。
「裕美さん、ちょっと言いそびれちゃったけど、護人の儀式っていうのはね、本来は祭壇を作って準備をしてから、時間をかけて行うものなの」
ミヤビは、さっきの儀式のことを説明してくれた。
「それじゃあ、さっきのは何なの? あれも護人の儀式なんでしょ?」
「あれはね、儀式を極端なくらい簡単にしたものなの。けど、本来の儀式もさっきの儀式もやることは何も変わらないから………」
突然、言葉が途切れた。ミヤビが黙ってしまったのだ。私には、何が起きたのか分からない。
「ねぇ、ミヤビ。どうしたの? 何が起きたの?」
「…誰かが…来るわ………来たっ!」
ミヤビの言い方は、何か得体の知れないものが来るかのような言い方をしていた。
ミヤビが言う『誰か』は、廊下から来ないで、階段下からやって来た。そしてそれは、私がよく知るクラスメイトで、彼は私とミヤビに声をかけてきた。
「お〜い、天野さん。巫女服の人とそこで何をしてしているんだい?」
そこにいたクラスメイトは、女の子っぽい柔らかそうな髪をわざとボサボサにしたような、短めの髪型をしていた。制服から垣間見える身体のラインは、男の子らしい直線的なラインというよりは、少しだけ曲線を描いているようにも見える。
「森崎くん?」
私は僅かに驚いた声を上げた。ミヤビも後ろを振り向き、気配の正体が私が知る人だったことに驚いていた。
「さっきの気配の正体は、あなただったのね?」
いきなりミヤビが森崎くんに問いただし始めた。森崎くんは両手で、黒い物を握ったままだった。
森崎くんが持っている黒い物。あれが拳銃なのだろう。テレビや映画で見たことはあったけど、本物を見るのは初めてだった。
「…細かいことは俺には分からないけど、仮にそうだとしたら、どうするつもりだい?」
するとミヤビは、森崎くんに向けて右手をかざし始めた。すぐさま森崎くんはミヤビに銃を向けて、身を低く構えた。