勾玉キッス☆ 71
やはり答えてくれない。
「………しょっぱいけど……少しだけ酸っぱくて……柔らかい………味……」
絶え絶えなほど小さな声で、桐生クンは答えてくれた。それが私には嬉しかった。
「ふふっ、ありがと」
思わず、笑みがこぼれた。
(魔物らしくないな。)
と、私は心の中で自嘲する。
私は桐生クンを見つめた。目と目が合う。
「ねぇ、桐生クン。もう1回、しない?」
* * *
「…ゆっくり深呼吸をして……そう……心の準備はいい?」
裕美さんに深呼吸をさせて、私――ミヤビ――は裕美さんに尋ねた。
「……ええ。いつでもいいわ」
目をつぶったまま、裕美さんは言った。
「それじゃあ、今から私が持っている[巫女の力]をあなたに渡すわ。
これであなたは[巫女の力]の一部を使うことが出来るわ。だけどそれは、あなたが[勾玉の触媒]、つまり、[巫女の護人(みこのまもりびと)]になる、ということなの。
護人は巫女と運命を共にする……
あなたが雅章君と運命を共にするということは、雅章君が自らオトコを求めるようになれば、あなたも雅章君と同じ運命をたどるかもしれないの。
その覚悟はある?」
「……覚悟は出来ているわ。私は……もう迷わない。お願い、早く始めて」
目をつぶったまま、裕美さんは言った。その言葉に、私は裕美さんの並々ならぬ決意を感じた。
彼女は、本気だ。
「…分かったわ。それじゃあ…始めるわよ」
私は裕美さんの胸に手をあてた。ちょっとだけ、私も深呼吸する。
「……封印の巫女、ミヤビの名において。我が力を、天野裕美に授けん」