勾玉キッス☆ 7
と自分自身に突っ込みを入れつつ、目線を下げて見ると……
……………!!
胸が大きく盛り上がっている!!そんな馬鹿な。
シャツを大きく張っている物体を両手でわしづかんでみる。指に食い込む柔らかい感触に、思わず身震いする。
これって…マジ?ホンモノデスカ?
ぐるぐると頭で考えを張り巡らせる。さっきまでは男…今は女。俺の頭の中は猛烈なパニックになっていた。いや、普通パニックならない方がおかしい。
そう思っていたら、タタタッと廊下から足音がしてきた。
やばい。この場は、はっきり言ってチョーまずい。
誰かに見つかれば、アナタ誰?って言われるに決まっている。
もしかしたら、俺、変人扱いになるかもしれない。そんなネガティブな考えになりつつある
俺を他所に、ドアの外ではある人物が近づいてきた。
その人物はドアの前に来ると、トントンと叩いてくる。
「雅章ーーー、もう起きているの?」
裕美の声だ!どうしようどうしようと、鼠の如くぐるぐると回る俺。
「そ、そうだ!」
とりあえずは…ドアを開けないようにする事。今は、こうするしかない。
俺は入り口の近くまで来ると、両手でしっかりと扉を固定した。
「あれ?開かない…ちょっと、何ふざけているのよ。開けなさい」
ドンドンとドアを叩く。
聞えな〜い、聞えな〜いと心の中で呟きながらドアをきつく閉める。
うーーー、そんなに力いっぱい開けようとしなくても…
「だ、駄目、裕美。今は…入ってきちゃ駄目ぇえええ。」
と、思わず大声で叫んでしまう。すると裕美は、開けようとする力を一瞬緩める。
「ちょっ、ちょっと、あんた誰よ?なんで保健室に居るのよ」
と驚いた声がする。や、やばい。今更気付いたが、声も異常に高い。明らかに男のそれではない。
俺ってマジで女になった?
「雅章!あんた、まさか」
ち、ちがうんだ、裕美。これは…と弁解したいが、女の声しか出せないオレは、オロオロする。
「わかったわ。どうやら覚悟が出来ているようね」
覚悟って…アナタ…それにオレの何がわかったんですか?
ドアの向こうでは、パキ、ボキっと指を鳴らす音がする。裕美のやつ、相当怒っているようだ。
何やら嫌ーなヨカーン。
「ちょ、ちょっと、まって。誤解、そう…誤解だから。裕美、俺の話を…」
「もう怒った!雅章、あんたって人はーーーーーー!!」
「ひっ!!」
咄嗟に両腕で頭を抱えドアから離れる俺。
次の瞬間、天地が引っくり返るような轟音が部屋中に響いた。保健室のドアが、メキメキと歪んで蹴破れたからだ。
「うぎゃああああーーーーーー!!」
俺は甲高い声を上げつつ、本日二度目?の意識を失った。