勾玉キッス☆ 59
ば、ばか…俺、何を考えて…
「ふふっ…とても可愛いかったわよ。これならあの方も満足してくれるわね」
「くっ…てめえ…」
俺はヤツを睨みつけた。だが力の差は歴然だ。
今は強がるしかない。
「そんな顔をしても無駄よ。ふふっ、今日は御挨拶。またお会いしましょうね」
「ま、まてよ。うわぁ…」
その瞬間、物凄い風が辺りを吹きつけた。
それが終わった時、いつのまにかヤツの姿がなくなっていた。
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あれから数日が経った。
倒れたミヤビは、命には別状がなかったけど、かなりのダメージを受け今は自らの体を作り直している。
弱い気を練った体では本来の力が出ないそうだ。
やはり、俺達がひとつになればいいんだけど……
『雅章君、あいつはきっとまた来るわ。でも大丈夫、その勾玉があなたを守るから』
ミヤビはそう言うけど、今だに外れない七色の勾玉。
俺はこの勾玉に何か秘密があるのだと思うけど、ミヤビは何も言ってくれなかった。
そして俺は――
コツコツ…
と鳴らす黒のハイヒール。超ミニのタイトスカートから伸びる長くすらりとした美脚。
ツンと上向いた形の良いお尻が、歩くたびに左右に揺れる。
ピンクのジャケットに白いブラウス。胸にはリボンタイ。
プラチナブロンドの長い髪を掻き揚げながら、美女が颯爽と廊下を歩いている。
女性の目で見てもスーパーモデルかと思うくらい、かっこいいよな。
この人が、俺達の担任である如月先生。
…まぁ、麗華姉ぇ本人だ。
「どう?雅ちゃん、緊張した?」
歩きながら麗華姉ぇが話し掛けても俺は、俯いたままだ。
先日の事もあって、俺はまともに麗華姉ぇの顔が見れない。
別人だったけど、あのキスは強烈だったのだ。
「べ、別に俺は緊張してないよ。麗華姉ぇったら何時もの事じゃん」
「もぉ。雅ちゃん、俺なんて言葉は言わないの。それに学校では先生でしょ?」
「うー・・・ご、ごめんなさい、如月先生…」
「そうそう。きゃっ!女の子の雅ちゃんって、やっぱ可愛いわ♪」
「あうう…」
麗華姉ぇには、何時もの事だって言ったけど、正直俺は緊張していた。
馴れない制服の感覚もそう。
このスカート、丈がかなり短いので階段を昇る時は後ろを手で押さえている。
ちょっと油断すれば、ショーツが丸見えだよ。
ブラウスも大きな胸には窮屈だし、歩くたびに揺れるのは…とほほ。
それにクラスの連中に会うのもなんだか複雑だ。
女になった事は裕美や祐樹以外は内緒だ。俺の正体がわかったら大騒ぎだよ。
その点は、麗華姉ぇが何とかしてくれるだろう。
ガラガラ…と2年1組の教室のドアが開く。
「クラスの皆ぁ、おっはよう♪」
相変わらず麗華姉ぇ、いや、如月先生のテンションは高いなぁ。