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勾玉キッス☆
官能リレー小説 - 性転換/フタナリ

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勾玉キッス☆ 43

「か、観覧車が停まってしまったよな…」

俺は目を合わさずに話しかけてみた。裕美からの返事はない。
怒っているのかな…いや、そんな事は…
お互い顔を逸らしたまま無言の時が流れていく。
その時、

――― ミヤビ

「……えっ!?」

俺はゾクッと、背筋が冷たくなるのを感じた。
どこからか鋭い視線が俺の体に突き刺さっていたからだ。
う、動けない。まるで蛇に睨まれた蛙のように。
そう意識する程、視線は俺の体を拘束した。

ガクガクと膝が揺れ、つーと汗が頬を伝って落ちていく。
こ、怖い…言い知れぬ恐怖にすぐに声が出なかった。

「ああ…うう…ゆ、ゆ…」

駄目だ。声を出そうと思っても、体が震えて出ない。

――― ククッ

背中から何かが包むような感覚になる。
見えない手が俺の体を抱きしめているようだ。
「み、雅…ど、どうしたの?」

俺の様子に気が付いたのか、裕美が話しかける。
もう駄目…そう思った時、

ピンポンパンポーン。
 
遊園地内にお知らせのチャイム音が鳴る。

『ただいま観覧車の電源付近でトラブルが生じました。お客様には大変申し訳ありませんが、
今暫らく席に座って待っていてください』

観覧車のトラブルを知らせるアナウンスが流れると、俺を拘束していた視線が、いつの間にか消えていた。

「はぁはぁ…た、助かった…」
息を切らしながら安堵する。裕美も深刻な表情をしていたが、俺の安心した様子にすぐに和らいだ。

「雅ぃ、どうしたの?凄い汗よ…」
「い、今、ものすごい視線を感じなかったか?」
「視線?ううん、何も感じなかったよ」

裕美には感じていない。
…じゃぁ、俺だけなのか?
 
すると裕美が心配そうに雅に告げる。

「ねぇ雅…」
「何だい裕美」
「その視線ってどんなんだったの?」
「どんなって…怖い…怖い視線…」
「だからどんな怖い視線なの?」
「えっ…そうだな…言うなれば『蛇に睨まれた蛙』の蛙になった様な感じ…」
「『蛇に睨まれた蛙』の蛙か…」

裕美はそう呟くと急に俯いてしまった。

そして観覧車が再び動き始め下に戻るまで俺と裕美は一言も語らず黙っていた。

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