勾玉キッス☆ 5
「なんだよ、この汚ねぇ札は。」
急に興味を持った俺は、もっと近くで見ようと顔を近づける。
「わわっ!!」
つま先が石につまずき、体を前のめりになって倒れてしまった。
「いってぇ。まったくついてないぜ・・・あれ?」
気がつくと手には、さっきの札が握られている。
どうやら転んだ拍子にどこかを掴もうとして札を引き剥がしてしまったらしい。
突然、光がそれまでのうっすらとしたものではなく、より強く激しくなる。
「ちょっ、ちょっとこれって、やばくねぇか?」
暫らく間、物凄い勢いで輝いたと思うと、急に岩は発光しなくなった。次の瞬間、黒い霧のようなものが岩から溢れてくる。ドス黒いその塊は、みるみるうちに俺の視界に広がっていくではないか。
「な・・なんなんだよ!!いったい!!」
俺は慌ててその黒い霧から離れようとした。だが、霧に『睨まれた』途端に体がまったく動かなくなってしまった。霧に目などあるはずもなく、睨むことなどできるはずもないのに、なぜかその時、そう感じていた。
「ミツケタ・・・」
突然、黒い霧がそう呟いた。
「えっ!?」
俺は驚いて周りを見回した。だが、周りには俺以外誰もいない。
「そんな馬鹿な・・。」
俺は信じられない表情で黒い霧を見ていた。
当たり前だ。霧が喋るなんて常識外れもはだははだしい。トリックにしては出来すぎている。
「クク・・マッテイタゾ…」
再び霧が呟くと、俺の方へと近づいてくる。
「うぁあああああ!!」
手を払い、逃げようとしたが、体はまったく動かない。
霧が俺の周りを覆ったかと思うと、視界は真っ黒に染まった。
ぶよぶよとした圧迫感。時折全身を舐められるような感覚。
………苦しい……息が出来ない……
もがき、手を動かそうとしても体がきかない。そのうち 意識が薄れていくのを感じる。
瞼が重たくなり、視界がどんどん狭まっていく。
…ゆ、裕美……
そして…俺は意識を失った。
どれくらい時間がたったのだろうか。俺はゆっくりと瞼を開ける。
ぼー…っと天井の蛍光灯を眺めながら直前の記憶をたぐっていると、
「雅章!!」
裕美の声がするのと同時に、彼女の顔が俺の視界の中に飛び込んできた。
「…ゆっ、裕美…?」
俺は起きあがりながら、彼女に声を掛けると、