勾玉キッス☆ 35
そして俺と裕美は近くにあったベンチに腰掛ける。
「さ〜て改めてこの先の行動を決めましょうか」
「そうねぇ〜近くの繁華街にしましようかな…それとも遊園地にでも行きしましょうか…雅ならどっちに行く?」
「そうだな…じゃ繁華街にでも行くとしますか」
そう決めると俺は早速行こうとしたが…
「ねぇ、繁華街に行く前に公園に来たから少し回らない?」
「う〜ん、まあ良いんじゃねぇか」
裕美の問いに俺は適当に言うと裕美は俺の手を取り、ある場所へと向かった。
裕美が小さく華奢になった俺の手を引く。
男の時は、裕美の手はすっぽりと収まったのに…
きゅっと手を握られると柔らかくて、ほんのりと温かく感じる。
そう言えば、ガキの頃もこんな事があったな。
「ホント、こうやって雅と来るのは久しぶりだよね」
「そ、そうだな。そんなに来る事はないわけだし」
いつのまにか来なくなった公園。
ガキの頃から変わらない歩道を裕美と手を繋いで歩く。
「ね、ねぇ雅」
「な、なんだよ裕美。いきなり」
「あー、やっぱ気がつかないんだ。せっかくお洒落したのにぃ」
ぷくっと頬を膨らます裕美。
「あ、いや…か、かわいいよ」
俺はしどろもどろになりながら、何とか裕美を宥めようとした。
ちなみに裕美の服はトップにジャケット、その下はピンクのタートルネック。
胸を強調しているタイプで丈が短く、ボトムはチェックのミニスカートにブーツ。
普段の大人しさとは違って、どちらかと言えば活発そうな服装だ。
「もぉ。相変わらず雅は鈍いんだから」
「しょ、しょうがねぇだろ。慌てて出てきたんだし…わわ!!ちょっと・・・」
裕美に引っ張られながら着いたのは、公園の中央広場だった。
「ここも少しも変わらないわね」
「はぁはぁ…そうだな。うーーん」
俺は思いっきり背伸びをする。真っ青な空に空気が澄んで気持ちがいい。
ブルっと俺のでっかい胸が揺れるたびに、首飾りである勾玉が鳴る。
その時、ブルブルと後ろポケットにあった携帯が振動を起こしていた。
誰だろう?麗華姉ぇかな?
ピッ!
携帯を開いてみる。
誠からのメールだ。
『雅章、これからどこかに行かないか?やっとセバスチャンから逃げて
来てさ。いやぁ〜参ったよ』
思わず苦笑する。
そうだった。あいつには、まだ何も言ってなかったけ。
女になった俺をどう思うかな…
昨日までは、親友として…ライバルとして…
そう思った時、頬を温かい一筋が引いていた。
あれ?何だよ…どうしたんだよ。お、おかしいな。
なんで、ぐす、泣いてるんだろ……
涙腺が決壊してしまったのか、涙は止まる事なく頬を濡らし続ける。
抑えていた心が、切なさにキュッと小さくなっていた。