勾玉キッス☆ 31
「き、綺麗しすぎだよ。…し、信じられねぇ」
鏡にみとれていると、裕美が横から覗き込む。
「ふふっ凄いでしょ。簡単なメイクなのにバッチリ決まるんだもん。びっくりしちゃったよ」
麗華姉ぇもうんうんと頷いている。
その後、髪を丁寧に整えられ、アクセントとしてピンクの小さなリボンが付けられた。俺はなるべく地味なのを主張したが、2人に「雅ちゃんには、この位が丁度いい」と言われ、受け入れてくれなかった。
そして俺は二人によってまた可愛い美少女へと醸し出されていた。
“はぁ…やっぱりこうなるんだな…”
そう思いながら鏡に写る俺に溜息をつく。
「あら嫌だわ、そろそろ仕事に行かなきゃ」
「あっ、早く行かないと」
「うん、雅ちゃん裕美さん行ってくるね」
「行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃい…麗華さんも大変よね、なんてたって私達の学校の教師兼学長兼主席理事だもんね」
「しょうがないよ…分かって祖父から学長を引き継いだんだから…」
俺と裕美はそう言いながら麗華姉ぇを送り出したのだった。
そう麗華姉ぇは俺達の学校でいくつかの肩書を持っている。
本来は只の教師だったのだが学長だった俺や麗華姉ぇの祖父が引退を期に麗華姉ぇは学長と主席理事まで引受けたのだ。
まあ忙しそうだが楽しんでやっているので俺はあまり心配してない。
「ねぇ朝食終わったら何処かに行かない?」
「えぇぇ…それは良いけど…せめてメイクとリボンは取らせてくれよ!」
「駄目よ!雅ちゃんはこれで出かけるの!第一可愛いのに外しちゃ勿体ないでしょう」
「そんなぁ…」
こうして俺と裕美は朝食を終えると外に出かける事にしたのだった。
部屋に鍵を掛け、俺と裕美はマンションの玄関ホールに降りて来た。
通りに出ようとした時、俺は急に立ち止まってしまった。
「や、やっぱ恥ずかしいな…」
女物を着ているという羞恥心が込み上がってくる。
このまま街に出たら、俺、どう思われるか。いや、今は女なんだから…
「雅ちゃん、何ボーとしているの?早く行こ」
「う、うん」
裕美に言われて俺は出ようとするが、その場でもじもじしてしまう。
というよりも頭が真っ白になってしまい、そのまま突っ立っていると言った方が正しいけど。
「もぉ雅ちゃん。今更恥ずかしがってもしょうがないでしょ!」
「そ、それはそうだけどさ」
恥ずかしいんだからしょうがねぇだろっ、と言うとした時。
しびれを切らしたのか、急に裕美が俺の手を取って歩き出した。
「わわ!ゆ、裕美」
「まったく。さっさと行かないと駄目でしょ」
「ど、どこに行くんだよ」
「私の家よ。お母さんに言わないといけないし、それに着てみたいお洋服があるのよ」
「えー!?やだよ。俺、お前んとこのおばさんに会うなんて」
「大丈夫。お母さんには雅ちゃんの事をちゃんと話しておいたから」
「マジ?」