勾玉キッス☆ 127
てんてん、てんまり、てんてまり
おやまをこえて、たにこえて
あやしのちにもすみわたる
せいころはいつぞやか
てんてん、てんまり、てんてまり
おかわくだり やまこえて
みこのすがたをみたものは
くるりと回って巡りあい
周りに回って巡りあふ
神城市を一望できるビルの屋上。
その一番高い場所に座わり、口ずさむ人影がいた。
「巡りあふか…あん・・・」
艶かしいピンクの唇が声を紡ぐ。高く透き通った声。
その人物は、コンクリートの屋根に腰掛け、長い脚を組み、時折吹く風に
長い髪を流しながら、じっと景色を眺めていた。
視線の先は…あの病院。
「うふふ。まさかあの娘がこの街にいたとはね」
艶のある長い髪を掻き上げながら呟く。
「ちょっと前なら、私たちと一緒だったのに。変われば、変わるものねぇ」
っと誰に言うことなくひとりごちる彼女。
すらりとした長身に、張りのある白い肌。整った美顔に腰まで届く長い髪。
そのままなら絶世の美女といえるが、頭に生えた歪な2本の角に、お尻から延びる黒い尻尾は
彼女が人外である証拠。身につける衣装もまた奇抜だった。
水着とも言える胸元とお腹の部分が大きく開き、先端部がぷっくりと浮き上がった大きな果実と艶かしい臍周りを
しっかり強調するようなボンテージ。
足先から白い太股の中ほどまでをぴったりと覆うハイヒールのブーツ。
細い指先から二の腕を隠すぴたりとした手袋。それらはすべてエナメルのような光沢を放つ漆黒に
ところどころ白金の装飾が施されている。
まるで、その手のアダルト系の出で立ちだ。
「うふふ。幻姫や朱姫も来ているようだし。これは面白くなりそうね」
期待に満ちた表情。瞳を赤くした魔の者が呟いた。
「さてと。私も動きますか」
彼女は、すくっと立ちあがると、屋上から飛び出した。
そのまま重力に引きずられ、彼女が地面に叩き付けられることはなかった。
なぜなら背中から大きな翼を広げ、空に浮かび上がっていたからだ。
「うふふ。その前に、久しぶりの男を味わうのも悪くないわね」
漆黒の翼を広げた彼女は、どこかの場所へ飛び去っていった。
***
とある場所。
大きな鏡の前で、白くきめ細かい肌を晒し、溢れるくらい豊かな胸元を両手で覆いながら
愛らしい美少女が、不満そうに頬を膨らませいた。
「ムス…」
「どうしたのよ雅ぃ〜♪さっ、さっ、これを早く着けようね♪」
彼女の傍らにいるこれまた美しい少女が、手に持つものを渡そうとしている。
その表情は、なにやら期待に満ちているが。
「あのな、裕美。いつまでこんな事をしているんだよ?」
「そういわれてもぉ〜ねぇ」
甘ったるい声で、裕美が俺にその布切れをしつこく渡そうとしていた。
それに俺はブチ切れた。
「そんな派手な水着を着れるかぁ!俺は男だぁ!」
俺は思わず、更衣室の中で大声を張り上げていた。
ここは女性専門店。
色とりどりの服やら女の下着やらで男の俺には目まいがする。
女になって多少は慣れたつもりでも、やはりいざ店に入り女物の下着を手に取ると…
ううっ、頭が痛い。
この店、以前、麗華姉ぇと行った店よりもこじんまりしているが、それでも品揃えが豊富だ。
せっかく病院からの帰りに、スーパーで安売りの下着でも買おうかと思ったのだが、
帰りのバスで裕美のやつ…
『雅にはそんな安物はダメ。ちゃんと品を選ばなくちゃ』
と言われ、しぶしぶ、裕美の行きつけの店に来たわけだが…
「ちぇっ。勝手なんだから」
試着室から裕美を追い出すと、ぶつくさと言いながら、穿いていた下着を脱ぎすて
床にあった布切れを手に取る。
「こ、これを身につけるのかよ…」
思わず目まいがする。
手の中には、桃色のあざやかなTバック水着。
腰の部分が紐タイプで…ごく…い、いくらなんでも…
これを身につけたら男を失っていくような気がする。
「ええい」
意を決して、脚を通し身に付ける。
…って、これって股間の布少なくね?