PiPi's World 投稿小説

参謀ディオン・ファントスの一生
官能リレー小説 - 戦争

の最初へ
 22
 24
の最後へ

参謀ディオン・ファントスの一生 24

つまり、これは・・・
ディオンやオルタンスを否応なく帝国の後継者争いに巻き込んでしまうと言う事だったのだ。

この皇帝の処置は、後世の歴史家の中でも賛否が分かれている。
これによってシャルロットに皇位継承権を暗に与えたと言う見解や、帝国をより混迷させたと言う見解もある。

だが、この小さな騒乱と事後処理が、後の世に語られる綺羅星のような名将や大人物を生み出した事は確実であった。

神聖暦1786年・・・
この年がディオン・ファントスの事績が初めて記される年であり、飛躍の魁となる年であったと後世語られる事となったのだ。



明けて神聖暦1787年。
この年の初旬、オルタンス大公に就任したアルベルト・ヨヒアム・ファン・オルタンスはアルティレニア帝国第二皇女シャルロット・ド・アルティレニアと結婚した。
田舎大公と帝国皇女と言う組み合わせは、オルタンス国内以外では笑い話の1つになる程度であったが、本人たちの意志は別にあった。

その別の意志は、オルタンス公国参謀本部長にしてエンタリオ州軍参謀長であるディオン・ファントス少将もひしひしと感じていた。

彼は先年のクレフェール騒乱の戦功を持って公国軍大佐に昇進。
同時に帝国陸軍大佐にも就任している。
そして結婚とマクシアム伯継承により少将に就任。
これによって公国軍8千とエンタリオ州軍1万5千の参謀と言う立場になっていたのだ。

当然、彼に課せられた使命は軍制改革である。
エンタリオ州軍はそもそも帝国正規軍ではなく、エンタリオ州の守備兵で民間徴用である。
帝国式軍隊教育を受けた者は士官に限ると言う殆ど民兵と言われるレベルだ。
それだけに彼が手を加える余地は沢山あった。

「責任重大ですわね、ディオン様」
「一応軍務の時は上官ですよ『ファントス』中将」

デスクワークをこなすディオンは少し困った顔で彼女に返す。
彼女・・・リディア・ファントス公国軍総司令はディオンの妻の一人となり、家庭に入るつもりであったのだが、先代マクシアム伯の退役により総司令に就任していた。

マリアンナとクレアとの結婚が正式に決まった日、ディオンはリディアにもプロポーズし、一旦リディアは断ったものの、娘のユリアから『家の事は私がやるから結婚なさい』の一言と、アルベルトの『結婚して軍でディオンの後見となってくれ』の言葉でで半ば周囲が強引にディオンとくっつけた格好となった。

今はエルミナと共にディオン最大の理解者として軍務で支えているのだ。


この通り、ディオンはプライベートにおいても順調かつ幸せであった。
ディオンと結婚と同時にマクシアム伯は軍を退役、マクシアム伯爵号を譲ると『公弟』フリッツと言う無官の気楽な立場で隠居生活に入っていた。
とは言っても、彼の衰えは確実に迫っており、世代交代はほぼ規定路線であった。


公国軍幕僚は総司令であったフリッツの退役により刷新。
老将ヴェルナーは少将で副司令として留任したが、歩兵総監シェルター大佐、騎兵総監カルラ・キャバリエ大佐、工兵総監リドリ大佐と今後ディオンを支えていく若い士官達が抜擢されたのだった。

それ意外にも砲兵総監としてユリア・モーファイム中佐、参謀部直属と諜報課長としてエルミナ・フォートネス少佐、イリーナ・アーティラリーも参謀部大尉となっていた。

この殆どが大抜擢と言う昇進で、新しい時代を感じさせる人事だった。

「でも、補給総監に人がいないんだよなぁ・・・」

人事から刷新してきたディオンにとってそこが悩みの種だった。
この部署はディオンが重視する所であったが、現任のトルエ大佐は可もなく不可も無い典型的な軍官僚だ。
地味であるが重要なこのポジションを任せれる人がいなくて、そこが今のディオンの悩み所であった。

「そこは大公殿下とご相談なさいまし・・・マリアンヌを連れていけばいいですわ」

リディアは若い夫にアドバイスしながら微笑む。
因みに一夫多妻で『正妻』や『側室』と言った考え方は妻の間では無い。
対外的には母の身分が子供にも適用されるからマリアンヌが正妻的な扱いであるが、年長の妻は年少の妻を妹として慈しみ、年少の妻は年長の妻を姉として敬愛すると言う古来からの伝統で、妻の間の身分差は姉妹の序列のようなものであった。

「うん、そうだね・・・姉上にも会っておきたいし」

ディオンもリディアの言葉に同意する。
彼の姉、レナはアルベルトに嫁ぎ、少し前に男児を出産していた。
アルベルトにとっては初めての子供であり、ディオンにとっては甥だが、シャルロットがいる関係で立場は微妙なのだ。

それでも、これが即後継者問題になるには、関係者全員が若すぎる。
しかもシャルロットとレナはかなり仲が良く、問題が起きる余地は今の所無かった。

只の青年士官であった筈のディオンだが、立場が上がっていくにつれこんな事も考えないとならないようになった事に苦笑しつつ、その日の仕事を終え、帰宅したのだった。


リディアと共に帰宅したディオンをマリアンヌとクレアが迎える。

「ただいま、マリアンヌ、クレア」
「お帰りなさいませ、旦那様」
「お帰りなさいませ、ディオン様」

身分が上でも結婚すれば夫が主である。

SNSでこの小説を紹介

戦争の他のリレー小説

こちらから小説を探す