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いざ立て戦人よ
官能リレー小説 - 戦争

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いざ立て戦人よ 1

ここは魔法と科学が融合して存在する世界。
その最も大きな大陸の西端に位置する小国エルフィール公国は豊かな土壌と鉱産資源に恵まれ“神々に祝福された地”と呼ばれていた。
この国を(西側の海岸線を除いて)取り囲むように位置しているのが大陸最大最強の軍事国家オルガニア帝国である。
この帝国は複数の国々から成る“連邦”の要素があり、常々エルフィール公国にも帝国の傘下に加わるようにと国際的圧力をかけて来ていた。
公国では国民の多くが自主独立の道を望んでおり、特に軍部を中心に「帝国と戦ってでも我が国の独立を守り抜くべきだ」との過激論が渦巻いていた……。


「こんにちは〜!小麦粉を届けに来ましたぁ〜!」
「よぉ!エルン、来てくれたか」
ここはエルフィール公国の首都エルフィーリアスの城下町。
商店街に建つ一軒のパン屋の店先に立った少年が元気良く挨拶すると、中から店主である太ったオヤジが出て来た。
「お〜い!エミリー、こっちに来て小麦粉を運び込むのを手伝ってくれ!」
「は〜い!パパ」
店主に呼ばれて中から出て来たのは少年と同じ年頃の娘。
まだ美しいというよりは可愛いという形容の方が似合う幼さを残している。
店の前には一台のオート三輪が停まっており、その荷台に小麦粉の袋が積まれている。
しかしこのオート三輪、我々の世界の物とは異なり排気管が無い。
これは魔導エンジンという運転者の魔力を源とする発動機によって動いているのだ。
この世界の自動車や鉄道は皆そうだ。
この世界の住人は生まれ付き大なり小なり魔力を保有している。
それゆえに科学技術の分野においても魔法が欠かせない存在として組み入れられていた。
「しかし大したもんだなぁ、エルンは…。その歳でオート三輪を動かせるとはなかなかのもんだ」
「いやぁ、そんな事ないですよ…」
店主に褒められた少年は頭を掻きながら照れ笑いした。
この少年、皆からはエルンと呼ばれているが本名はエルネスト・ノーマンと言う。
歳はまだ16、学校を出たばかりだが、生まれ付き魔力が人より強い彼は、普通20歳くらいにならないと操作出来ないと言われているオート三輪の運転が出来るというので、市場の配達の仕事をしている。
ちなみにこのパン屋の娘であるエミリーとは幼馴染みの間柄だ。
「エルンは将来、魔導機関車の運転士になるのよね!」
エミリーはまるで自分が誉められたように嬉しそうな笑みを浮かべながらエルンに尋ねた。
「うん、小さい頃からの夢だったからね。20歳になったら国営鉄道の採用試験を受けられるから、それまでは働きながら勉強するよ」
「そいつは残念だ。エミリーの婿になってウチのパン屋を継いでもらおうと思ってたのになぁ…はっはっは!」
店主の言葉に顔を赤くするエルンとエミリー。
「も…もうパパったら!冗談やめてよ!」
「そ…それじゃあ親父さん、僕、これで…!」
エルンは照れ隠しに鳥撃ち帽を少し深めにかぶるとオート三輪に飛び乗って走り去った。

「あれ?何だろう…」
配達を終えて市場へ戻る途中、エルフィーリアス市庁舎前を通りかかったエルンは、市庁舎前広場に人集りが出来ているのを見付けた。

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