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いざ立て戦人よ
官能リレー小説 - 戦争

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いざ立て戦人よ 2

「号外!号外!」
 新聞社のメイスンが声を枯らし、鈴を鳴らしていた。
「帝国との同盟決裂!同盟決裂!」
 人々はその報せに落胆し、怯えた。それは公国の命綱が消えたからだ。
 公国が独立を維持できたのは歴史のおかげだった。
 まだ科学と魔法が混同されていた太古の時代。もう一つの大陸から海を越え、肌が黄色い蛮族が西から攻めてきた。蛮族は大陸の諸国を荒らした。それを追い返したのが公国だった。
 当時の臨時連邦国家群(後の帝国)は公国と対等な軍事同盟を結んだ。それが長年、公国を守ってきた。その同盟が消えるのだ。
人々は口々に話し合っている。
「こりゃあいよいよ戦争かねぇ?」
「正直、オルガニアなんかと戦っても勝ち目は無いだろう。大人しく帝国の傘下に加わった方が利口なんじゃないのか…?」
「お前!それでもエルフィール人か!?」
「男なら誇り高き独立を守り抜くために銃を取って戦え!」
「バカヤロウ!誇りで戦争に勝てるか!」
「そうだ!みんな日々の暮らしや家族があるんだ!」
あちこちで論争が起こり、中には掴み合いになっている連中までいる。
「一体どうなるんだろうなぁ…?」
エルンも思わず不安を口にするが、正直まだ戦争という物が実感出来なかった。

それから一週間のエルフィール公国内外の動きは、正に“風雲急を告げる”という言葉を具現化したような急転っぷりだった。
帝国に頭を下げてでも戦争は回避すべきだとする公国政府と、誇りある独立を守り抜くために戦うべきだとする野党の衝突で議会は大揉めに揉めた。
そんな事をしている間に帝国は国境沿いに兵力を集結、着々と公国への侵攻準備を整えていった。
後手後手の公国だったが、ここに来て軍部によるクーデターが発生。首相以下反戦派の大臣達を強制的に退陣させ、軍による政権が成立した。
そして新政権は何を焦ったのか、ロクに迎え撃つ準備も整っていない状態で帝国に対して宣戦布告をしてしまったのである。

ジャーンジャーン!ジャンジャカジャッジャン!ジャッジャッジャッジャッジャン!
『…エルフィール公国軍、総司令部発表!!本日未明!!我が栄光ある陸軍第7連隊はオルガニア帝国領内の某作戦方面において敵戦車部隊を撃滅!!20キロ前進した!!また海軍連合艦隊も某作戦海域において敵艦隊と交戦!!敵に壊滅的打撃を与えた!!戦果は、空母1、戦艦3、巡洋艦5、駆逐艦7隻を撃沈!!戦艦2、駆逐艦6隻を大破…!!』
…街頭に設置されたラジオから勇壮な音楽と共に華々しい戦果が報告される。
「おぉ〜!また勝ったかぁ!」
「圧倒的じゃないか我が軍は!」
「まったく、開戦から一週間、連戦連勝だな!」
道行く人々も思わず足を止めて聞き入る。
その中にエルンもいた。
配達の途中で通りかかった市庁舎前広場で“総司令部発表”を耳にして思わず気になり、オート三輪を停めて聞いていたのだった。
「公国軍は凄いなぁ…。開戦前は全く勝ち目が無いって言われてたのに…」
ほんと、戦争なんて実際に戦ってみなければ判らない物だ…とエルンは思った。
それに自分の国の軍隊が勝ち続けるというのは悪い気分ではなかった。
エルンは普段は愛国者ではないが、今だけは自分がエルフィール人である事が誇らしかった。
心からそう思える。
「フンッ…愚か者共め、軍の嘘を何の疑いも無く信じおって…」
ふと隣からそんな声が聞こえたので見てみると、杖をついた老紳士が渋い顔でラジオを睨み付けていた。
エルンは声をかける。
「おじいさん、どうしてそんな事を言うんです?」
「解らんか?開戦から僅か一週間足らずで我が軍は十倍以上の国力差のある大帝国の帝都に迫る勢い…あまりにも“勝ちすぎ”じゃ」
「つまり軍は僕達を騙してるって事ですか…?」
…とエルンが言いかけた時だった。

グオオォォォー―――――ン…

東の空から飛行機の爆音らしき音が聞こえてきた。
それも1機や2機ではない。
かなりの数である。
空を見上げると、見た事も無い形の大きな飛行機がこちらへ向かって飛んで来る。
「おい、ありゃあ何だ?」
「空軍の演習だろう。カッコイイ〜♪」
「シルエットから見てあれは爆撃機だな。しかし四発機とは…我が国の空軍があんな重爆撃機を持ってたなんて知らなかったなぁ…」

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