PiPi's World 投稿小説

兵隊制度
官能リレー小説 - 戦争

の最初へ
 6
 8
の最後へ

兵隊制度 8

ルクスの意思とは無関係に身体がビクビクと跳ねる。
皮が破れるほどに筋肉が膨張して血液が勢いよく噴出する。
急激な肉体の変化に耐えきれずに骨が折れ、胃袋が破けて漏れた胃液が臓腑を焼き溶かす。
(痛イ!苦シイ!焼ケル!壊レル!助ケテ!殺シテ!)
あまりの激痛に思考がまとまらず、短い言葉がスパークする脳内で繰り返し浮かび上がっては消える。
だが軍医たちは容赦しない。
ここぞとばかりに怪しい薬品やら機械を使って実験を繰り返す。
いったいどれくらいそうしていただろうか。
やがて手術室からは悲鳴が聞こえなくなった。
ベッドの上では陸に上げられた魚のように、激しく反応していたルクスが血まみれのボロ雑巾のようになって弱々しく痙攣していた。
「―――ふむ。もうそろそろ限界のようですね」
「今回のは結構長持ちしたわね。これまでで最高記録よ?」
「コイツの前のは実験開始から10分持たず死んでしまったからの。
 いろいろ実験ができて助かったわい」
「では今日の実験はこれにて終了しましょう。
 死体はいつものように焼却炉で灰にしておきます」
こうしてルクス=ファーンは無実の罪を着せられ、実験台としてその生を終えた。
だが終わったのはあくまでも人間としての生。
血まみれボロ雑巾になった彼はまだ生きていた。
軍医たちすら予測してなかった、化け物へと変貌を遂げて。
その活動が始まったのは、兵士たちがルクスの死体を焼却場へ運ぶその途中からだった。
訳が分からない状態なので死体は専用袋に入れてそのまま焼却する……ここの兵士達にとって同胞の死体を扱うのは避けたいが彼ら自身も危ういのだ。いっそのことファトン鉱石が掘り尽くせばいいのだが相当あるらしい……それに変わる新エネルギー開発も各国とも消極的だ。
「ん?」
死体袋がピクッと動く様に見えた……だが普通じゃない職場だ幻視であろう。その兵士はポケットにある気付け薬を服用して台車に載せた死体袋を見ると呻き声が聞えた。もう一人と眼を合わせるとアサルトライフルを構えて後退する。一人が通路にある通信機の受話器を取り説明する。
「……本当だ!先程の実験体は生きている!直ぐに通路を封鎖して毒ガスを入れろ!」
通路を遮蔽する壁が飛び出し二人はホッとした瞬間、その壁が吹き飛んだ。
「な、なんだあれは」
それは異形なモノであった……悪魔を具現化したと言いようがない程の恐怖を与える。
「逃げるぞ!」
本来は囚人らを威嚇する閃光弾を投げて二人は傍にあるダストシュートに飛び込んだ。直観的に自分達が持っている武器では効かないと判断したのだ。
「リジス、横にあるハッチを開けてくれ」
「はい」
リジスは蹴り開け、先輩であるカウスがその先へと入りリジスも入る。
「よくモノが詰まるからここから出入りして押し込むのさ」
「へぇ〜〜」
カウスは開戦前からここに居るベテランであり施設に関しては隅から隅まで知っていた。
「本部と連絡取れるか?」
「施設内の通信網が死んでますね」
ハンド通信機の周波数を合わせると銃声と爆発音、そして怒号と悲鳴が入り混じっていた。
「仕方あるまい、ココを出るぞ」
「え?」
「ファトン鉱石があの実験体の中で何らかの化学反応を起したんだ……首都の軍本部はここを施設ごと爆破する筈だ」
「敵前逃亡ですよ」
「警備本部も混乱しているし逃げているさ」
カウスの言う通りだった、映像端末に映し出された警備本部は血塗れと煙が充満し首都から左遷された将校らの死体が転がっている。
「あいつは」
「何か書類を漁ってますね」
元が人間だから扱いは慣れているのだろう。
「妊兵施設の……」
「ヤバイぞ……リジス、記録を複製しておけ。場合によっては敵国の情報将校に渡す」
「!!!!」
「このカリマがアイツらの楽園になる前にケリを付けたいが……この国にはそれは出来ない」
「先輩」
「この先に万が一に備えて将校用のエスケープ通路がある、その先は空軍基地だ。行くぞ」
カウスはふと思い出した。ファトン鉱石が人体に影響を与える学説がある事を……。

SNSでこの小説を紹介

戦争の他のリレー小説

こちらから小説を探す