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兵隊制度
官能リレー小説 - 戦争

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兵隊制度 6

「なっ・・・!?そ、そんなっ。いくら今が戦時中だからって、そんな非人道的なことが・・・!」
「戦時中だからできるんだよ。もともと兵士の増産のために兵隊制度を作るような国だぜ?
 それくらいやったっておかしかねえさ!」

その言葉にいよいよルクスの顔から血の気が引いていく。
男の言っていることが真実なら、もはや自分には死ぬ以外の運命は残されていないということだ。
あの人間以下の種兵になるくらいなら死んだほうがマシだマシだと思っていたが、まさか本当に死ぬことになるとは・・・。
悔やんでも悔やみきれない話であった。
いっそこのまま死ぬなら種兵でもいいから童貞を捨てておけばよかったと後悔するほどに。
絶望の闇にとらわれていくルクスに男は楽しそうに語り続けた。

「ま、あきらめるんだな。
 これまで何回かここに戻ってきたヤツもいたが、そのうちみぃんなここに戻らなくなっちまったし・・・。
 脱走を企てたヤツもいたが、ここから数メートルも進まないうちに殺されちまったしな。
 せいぜい自分をここに送り込んだ上司への恨みつらみでもつづっておくんだな」

こうしてルクスは所長に無実の罪を着せられ、モルモットとしてアルカトラズ収容所に送られた。
天国から一転、地獄へと突き落された彼は、怒りと悲しみのあまり、あざ笑う囚人たちの声をBGMに、怒りと絶望に涙するのであった。
だが彼は知らない。
地獄にも仏や蜘蛛の糸があることを。
また同じように所長もまた知らなかった。
天国にも鬼が住んでいるということを―――。
最初に彼を待っていたのは死の恐怖による眠れない日々だった。
毎日1人ずつ、多いときは2〜3人の囚人が兵士に連れられていく。
戻ってきてまた牢屋に入れられる囚人もいれば、そのまま帰ってこない囚人もいた。
だが彼を何より怯えさせたのは帰ってこない囚人よりも、むしろ戻ってきた囚人たちのほうだった。
ある日、ルクスが支給された食事を口にしていた時のこと。
突然どこかの牢屋から苦しげにうめく囚人の声が聞こえてきた。
囚人服を破く音、苦悶に喘ぐ悲痛な声。
異常事態を知り、銃を持って駆け付ける兵士たち。
ルクスはそれをどうすることもできず、耳をふさいでやり過ごそうとしたが、しょせん無駄なあがきであった。
これまで以上に大きい悲鳴が聞こえたかと思うと、『グジョッ!グチュッ、グチョチョッ!』と気味の悪い物音とともに複数の悲鳴が上がったのだ。
それからすぐにいくつもの銃声が鳴り響き、牢屋に重い沈黙が訪れる。
しばらくして牢屋の奥から血まみれになった兵士が、やけにでかい担架に乗せた『何か』を運んで立ち去っていく。
それは少なくとも人間の形をしていなかったと思う。
人間にしては妙に丸っこく、大きな体型だったし、かけられたシーツからは角のような突起物が見えていたから。
だがそれが囚人のなれの果てであることはすぐにわかった。
その大きな担架からはポタポタと赤黒い血液が滴っていたし、かけられたシーツからはみ出していたのは間違いなく人間の腕だったから。
この収容所でいったいどのような実験が行われているのかはわからない。
だがそれが人道に反するものであり、生き残る確率の少ないものであることは否応なしに理解できた。
それからも牢屋には恐怖に耐えきれなくなったのか発狂するもの、壁に頭を打ち付けて自殺するもの、狂ったように殺してくれと叫ぶものを何度も何度も目撃した。
いつか自分もああなるのか。
自分は何も悪いことなどしていないのに。
恐怖に駆られたルクスは牢屋の鉄格子を揺らして己の無実を訴えたり、助けてくれと騒いだりする日々が続いた。
しかしそんなことここの兵士たちに走ったことではない。
ルクスや他の囚人が騒ぐたびに兵士たちに取り押さえられ、睡眠薬を注射されて無理やり黙らされた。
そうして身も心も疲弊し、別人のようになってしまったルクスに、ついに運命の日が訪れる。
新しいモルモットとして、牢屋から引きずり出される日が来たのである。

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