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兵隊制度
官能リレー小説 - 戦争

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兵隊制度 4


「―――新型の妊兵の飼育、ですか?」

所長室に向かったルクスは施設の最高責任者からの言葉にそう答えた。

「うむ。我が国は種兵・妊兵で兵士を増産する『兵隊制度』によって戦線が維持されている。
 しかし戦争とは生き物だ。いつ何がきっかけで劣勢に追い込まれるかわからない。
 そこで上層部は考えたわけだ。このまま『ただの兵士』を量産していたのでは、いつ状況をひっくり返されるかわからない。
 もっと優秀な兵士をたくさん作らなければ、とね」
「あ、はい。誠にもってそのとおりであります」

所長の言葉に戸惑いながら答えるルクス。
だが彼が戸惑っているのは武器・兵器の開発よりも兵士を優先する考え方ではない。
その程度のことならカリマ公国の人間なら、むしろ常識の範囲なのだから。
そしてルクスは迷いながらも、ついに抱いていた疑問を所長にぶつけてみた。

「あ、あの・・・。しかし、それでなぜ、自分のようなものにそのような重要な任務を任されるのでしょう?
 自分より優秀なものはここだけでもたくさんいると存じますが・・・?」

その質問に対し、所長は優しく微笑みながらそれを否定した。

「謙遜することはない。キミが種兵・妊兵の面倒を見る傍ら、勉学や訓練に励んでいることは知っている。
 我々はキミのそのたゆまぬ努力と向上心を認め、この任務を任せることにしたのだよ」
「・・・っ!」

所長の言葉にルクスの心は大きく揺れ動いた。
歓喜と迷いがぶつかり合い、波紋となって心の中で荒れ狂う。
自分の努力を認められたことはとてもうれしい。
これで種兵にならずに済む。
あんな動物以下の存在にならないで済む。
そう思うと歓喜せずにはいられない。
だが。その裏でこうも思う。

―――なぜ所長は自分が人知れず努力してきたことを知っているのだ?

ルクスはこれまで変なことを言われたくなくて、人知れず努力を重ねてきた。
それは自分が変わり者だと自覚しているが故の行動だったのかもしれない。
だと言うのに、なぜ所長はルクスが陰で努力していたことを知っているのだろう?
上司が部下のことを見ているのは当然のことと言えばそれまでだが、何かおかしくないだろうか?
説明しがたい違和感にルクスは素直に喜ぶこともできず、『ありがとうございます』とだけ答えるのが精いっぱいだった。
そんな彼の葛藤に気づいているのか、いないのか。
所長はさらに話を進める。

「もちろんこの任務は他言無用。
 キミにはこの任務をやってもらうにあたり、今いる部屋から関係者のみで構成された特別居住区へと移動してもらう。
 もし機密を漏らした場合、相応の厳罰が待っているので注意するように」
「は・・・はいっ」
「必要な資料はそちらで受け取ってもらう。・・・何か質問は?」
「い、いえっ。何もありませんっ」

質問はあるかと言われても、やったこともない任務に資料もなしでどうやって質問しろというのだろう。
仮にできたところで答えが期待できそうにもなかったので、ルクスはそう答えた。

「よろしい。それでは明日からこの任務に就いてもらう。
 明日の朝、担当のものを迎えに行かせるので、それまでに準備をしておくように。以上だ」

こうしてルクスはタナボタで新しい仕事に就くことになった。
新しい妊兵とはどんな連中なのだろう?
なぜ急にルクスがこの任務を与えられたのか?
疑問は尽きないが、それに答えられそうな相手は何も言う気配がない。
結局ルクスは素直に喜べないまま、次の日の朝を迎えるのだった。
多少の疑問を持ちながらも引っ越しの準備を済ませ、1人部屋で待機していると。
客の来訪を告げるチャイムが鳴った。
ルクスは緊張した面持ちで部屋の扉を開けると。
そこには重装備の兵士たちを連れた、見るからにゴツい中年の男が立っている。
いったいどのような修羅場をくぐってきたのか。
顔の右側には大きな傷があり、その傷のど真ん中に位置する右目は黒い眼帯で隠されていた。
てっきり自分を新しい職場に案内してくれる人が来たのかとばかり思っていたルクスは、予想外の来客に動揺を隠せない。
そんな中、謎の眼帯男が1枚の紙をルクスに突き付ける。
それを見て彼は驚きに目を見開かせた。
その紙切れの頭にはこう書かれていたのだ。『逮捕状』―――と。

「ルクス=ファーン一等兵だな?
 貴様を国家反逆の罪により逮捕する」

国家反逆?逮捕?男の言葉をルクスは理解できない。
そもそも彼は国家反逆罪どころか、何の罪も犯していないのだ。
誤認逮捕もいいところである。

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