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勇者の子孫
官能リレー小説 - 同性愛♂

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勇者の子孫 5

「お、俺と手を組もうぜ! 俺も勇者の子孫を殺そうと思ってたんだ! あ、あんたと俺が組めば……無敵だ! な? そうだろ?! なんならあんたが上でいい! だから……」
「…………」
媚びるような目でへニングにすがりつくクアド。
それを無言で払い除けて、へニングはクアドの首に深く刃を突き立てる。
そして、泡立つ血を流し痙攣するその顔に向けて最後の言葉を投げた。
「……なぁ、勘違いしてないか? あんたの首だって、金になるんだぜ?」

こうして面倒な奴等は片付いた。死人まで出る事態になるのならクアドから逃げ回らずにさっさと殺しておけばよかったとすら思った。
クアドは剣で誰を殺害したのだろうか?その人には悪いことをした…。
とりあえずは現場を見られると更に厄介なので、仲間割れの相討ちに見えるように死体を移動させてすぐに去った。
 ヘニングは一先ず城へ戻ることとした。
 言ってしまえばたかが剣。しかしながら、あれほどの業物が安値で売られていたのも珍しい。少なからず感動を覚えていたヘニングが、あの剣に執着するのも頷けた。
 通路を歩きながら、ヘニングは思案する。
(……あれだけ勇者の子孫がいるとなると、“当たり”を引くまで相当骨が折れるかもしれないな。腕が立ちそうな奴もいたし……面倒だな……)
 思考を巡らせてながら、ヘニングは歩く。ふと、奥から城の兵士が二人並び歩いてきた。兵達からは小声が聞こえてきた。
「……おい、聞いたか?」
「ああ。既に子孫達の同士討ちがあったみたいだな……」
 察するに、クアド達のことだろう。
「まったく下民共は……。地位が散らすつくとすぐこれだ。殺し合いなら外でやってほしいもんだな」
「でも、最初に死んだあの男……自分の娘を連れて来ていたよな?」
「ああ、それなら俺も見た」
「英雄になろうとした父親が、初日で死んだってことか……可哀想に……」
 兵達が通り過ぎた後、ヘニングは足を止めた。
(……娘連れで、戦いに来るなよ……)
 誰にというわけではない。
 ヘニングは小さく舌打ちをした。
もう色々と限界が来ているのだろう。
魔王の陣営もそうだ。
そうでなければ魔王が人間相手に直接依頼をしてくるなんてことは起こらないはずだ。
国王と魔王がしっかりした人物らしい外見をしていたのが救いだった。
 城に戻ったへニングが最初にしたことは、沐浴で実を清め服を着替えることだった。
彼の技前と反射神経により一筋の返り血も浴びてはいないが、それでも人を殺した時と同じ服を着ているのは嫌だった。はじめて人を殺してから何年経ったか忘れたが、その時からなおらない悪い癖だ。
「ふう……」
清めた体を木綿の布で吹き、据え付けの籠に放り込む。
彼の引き締まった白い体には、歴戦の傷跡がいくつも刻まれていた。が、新しい傷は一つもない。
「あと何人だ?当たりを引くまで……なるべく少ないといいんだがな……」
誰に言うでもなく、彼はつぶやいた。
新しく買った服に着替え、街に出たへニングは手始めに古い服を路地裏の浮浪者に、数枚の銀貨と一緒に投げ渡した。
「おめぐみありがとうごぜえます……」
感謝を述べる浮浪者に振り向くこともなく、彼は通りを歩き去った。

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