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勇者の子孫
官能リレー小説 - 同性愛♂

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勇者の子孫 11

 温泉は枯れていた。もうもうと舞う湯気だけが、その名残だった。
「なあ、ほんとに温泉ってのは……」
言いかけたヘニングを、盗賊の一人が不意に突き飛ばした。
「何を──」
抗議の声をあげようとしたヘニングの目の前で、彼を突き飛ばした盗賊が業火に包まれ、物言わぬ炭の柱になった。
「なっ……」
「上です!」
オージェの澄んだ声がヘニングの正気を取り戻させる。
「あれは……」
猪の皮の奥からでも気取ることのできる焦りを浮かべ、ヴァルトが空を見上げる。
彼らの視界に映るのは真っ黒な、影のような姿の龍。
口の端からわずかに炎を溢れさせていた。
「この痒みは──乾燥か……あいつの吐く炎で……だがなぜ温泉を?」
ヘニングは呟く。
「考えてる場合じゃありませんぜ!」
龍の低い唸りが、地面を揺さぶった。


その龍は地上を狙うために旋回を始めた。
ヘニング達は砦に移動をする。火を吐かれたら一発で全員が焼けるだろうが、屋根がない場所に居るよりかはマシだからだ。
砦の上に居る男達が矢を放ち注意を反らしてくれたので、予想以上にあっさりと砦に逃げ込むことが出来た。
ヘニング達は様々な武器を持ち、向かってくる龍に向けた。

そんなとき、地上から緑のワイヤーのようなものが放たれ龍に合わさった。龍はそこを先頭にして高度を急激に下げていく。
「龍の浮力よりも強い力で引き寄せられているのか?」
「仮にそうだとしても紐の方が切れてしまうよ」
山賊の男達が騒ぎ始めた。

ヘニングだけは気づいていた、緑の紐が触れた時から龍の飛び方がおかしくなってきている事に。
その龍は緑の紐から逃れようと必死で羽ばたいている。だが、少し上がってはのたうちながら落ちていく。
これを繰り返していればいずれは体力が尽きて完全に地面に落ちてしまうだろう。
時たま口から火を吐いてもいるが、その火は弱くおかしな蛇行をしている。
「一体あの紐の先端には何があるんだ?」
「なんだっていいさ、これでずいぶん戦いやすくなる」
山賊達は次々に砦を降りていった。フラフラと落ちてくる龍を真下から狙うつもりらしい。
緑の紐は龍の股間に巻き付き、しっかりと張り付いている。龍が引き剥がそうと暴れているにもかかわらず全く外れる気配がない。
そのうち龍は動きがゆっくりになっていき、高くは上がれなくなってきていた。そこでようやくヘニングが龍に絡み付いている紐が肛門に侵入して抜けなくなっている事に気づいた。
「おい!龍を捕らえてる物がなんか変だぞ、皆離れるんだ!」
ヘニングは砦の上から叫ぶが、下で走っている山賊達には全く聞こえていないようであった。龍を倒せるチャンスに興奮しているらしく、突き進んでいく。
砦に残っていた山賊達がヘニングのただならぬ様子にうろたえ始めた。

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