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女郎蜘蛛
官能リレー小説 - 時代物

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女郎蜘蛛 1

「お、新しい人相書きが出てるよ」
「かぁ〜、別嬪じゃねぇかい。こいつぁ何をしたんだい?」

「待て待て、え〜と…。おいおい、綺麗な顔して恐ろしいな。強盗、殺人、火付けにとここ最近巷を賑わせている事件の陰にこの女がいるようだぜ」
「おい、そりゃ本当か?女ってのは怖いねぇ」

「この女について分かっているのはこの顔と背中に蜘蛛の入れ墨、あとこいつがなかなか捕まんねぇのは子蜘蛛と呼ばれる手下がいるという事みたいだ」
「子蜘蛛ねぇ」
「親に捨てられた子供らさ。背中の刺繍とこれのおかげで付いた名が『女郎蜘蛛』なんだとよ」

「…世知辛いねぇ」
「ちげぇねぇ」

戦国の世にて天下分け目の合戦“関ヶ原の戦い”にて東の大将が天下を取り、この地は江戸として日の本の中心になり幾年……江戸八百八町の人々の話題を浚っているのが女郎蜘蛛と呼ばれる天下の大罪人、北町/南町奉行は愚か火付け盗賊改め方までキリキリ舞いにして江戸の住民は痛快爽快な一方で良い知れない不安もあった事は事実であった。ばら撒かれた読売を見たこの二人、共に大工をしており今日も景気が良い材木問屋の依頼で長屋新築工事の帰りである。名は清八と六衛門……この二人も元は農家の出であるが子供の頃に共に口減らしに寺の和尚のツテにより親方の元で修業し今では立派な大工として生活している。清八の故郷は数年前の水害にて消えたと言う。


「(ふむ……ここにいたか)」
読売を見た一人の剣客は空を見上げた。その体格は筋骨隆々、刀も大振り……何よりもその風貌は悪でさえも避ける程だ。
「(そのまま大乱の世に戻すのも一興かもしれんな)」
だが懐に託した書状はそれを許さぬ内容であった。

「稲浦村の漁師らに不穏な動きあり」
つまりは稲浦村へ向かえということである。
剣客の男が村に向かって歩き出した時、偶然にも清八と六衛門も稲浦村に向かっていた。
二人に大きな仕事が舞い込んだのだ。あまりにもうまい話に二人は最初は怪しんだが、和尚からも頼み込まれたので結局は引き受けた。
剣客の男は直七という。直七のすぐ後ろを並ぶように二人が歩く。
直七についていっている様な状況ではあるが、目的地が同じだからに過ぎない。
「あの前を歩く男が居れば安心だな」
「あんなのが居る時に襲いかかる奴なんて居ないだろう」
「そうだな」
そんなことを話しながら歩く。
二人が雑談をしている頃、書状に書かれていた通り漁師の男達がひっそりと集まっていた。
彼等は稲浦魚という新種の魚を繁殖させて一攫千金を狙っているのだ。
金に目が眩んだ行動ではあるが、これは誰の迷惑にもなっていない。むしろ、飢饉の時にはこの魚で大勢の村人が救われるかもしれないのだ。

剣客の直七が村に行く必要はなかったのだ。
直七が漁師達の集まりに介入したことにより、事態は歪んだ方向へと進み始める。

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